エヌビディアがAI半導体「H20」を中国向けに性能制限版投入へ

2025年5月9日、エヌビディアが中国市場向けに、機能を制限したAI半導体「H20」のダウングレード版を導入する計画があると、関係者の話としてロイターが報じた。米国の輸出規制に対応した措置であり、同社は市場プレゼンスの維持を目指している。
エヌビディア 中国向けに性能制限版を投入へ
米国の先進半導体輸出規制を受け、エヌビディアは中国向けのAI半導体製品に新たな対応を迫られていると考えられる。
今回発表された「H20」のダウングレード版は、2025年7月をめどに中国国内のクラウド大手顧客に提供される予定で、すでに通知も行われているという。
この新モデルは、従来のH20と比較してメモリー容量を中心に性能が制限されており、米国政府が求める規制基準を満たすよう調整されているという。
米商務省は先月以降、H20のような高性能GPUの対中輸出に対して許可制を義務付けており、エヌビディアはこれに準拠する形で設計変更を行ったと考えられる。
同社にとって中国はAI関連製品の主要市場の一つであり、今回の措置は完全撤退を避けるための“限定的な妥協策”とみられる。
規制環境が変わらない限り、競争優位性の確保には技術面のみならず、政治リスクを含む複雑な対応が不可避であることが浮き彫りとなった。
限定版の投入が意味する市場戦略 今後の課題と展望
エヌビディアの性能を制限した製品の投入は、規制の網をかいくぐる戦術としては効果的だが、市場での競争力には疑問も残ると考えられる。
特に中国国内では、ファーウェイをはじめとした国産AIチップメーカーが台頭しつつあり、今回のダウングレード版が採用されるかは不透明な面もあるだろう。
一方で、中国市場に一定の存在感を残すことで、規制緩和の兆しが見えた際に再展開しやすいという利点もあると考えられる。
エヌビディアとしては、規制の中でも最大限の選択肢を確保しながら、顧客基盤を維持し続ける姿勢を崩していないといえそうだ。
今後の焦点は、中国以外の新興市場への再配分と、規制に左右されない製品ポートフォリオの構築にあるだろう。
短期的な影響を抑えつつも、長期的な競争力をどう再構築するかが問われていると考えられる。