Mistral AIの新AI「Medium 3」発表、企業向けLe Chatも公開

フランスのスタートアップMistral AIは2025年5月7日、精度とコスト効率を両立した新しい言語モデル「Mistral Medium 3」を発表した。
あわせて、企業向けAIアシスタント「Le Chat Enterprise」の提供も開始しており、欧米を中心に企業導入が加速する可能性もありそうだ。
Claude並みの精度と圧倒的低コスト、Mistral Medium 3が市場に投じる一石
Mistral AIが新たに発表した「Mistral Medium 3」は、精度・性能・コストの3点で企業向けAI市場に衝撃を与えうる存在だ。
本モデルは、米Anthropicが開発した「Claude Sonnet 3.7」と比較して90%以上のスコアを記録しており、特にSTEMやコーディングといった技術系タスクで安定した性能を示す。
さらに注目すべきは、そのコスト構造である。
入力トークン100万個あたり40セント、出力トークン100万個あたり2ドルという価格は、従来の大型モデルと比較しても圧倒的に安価だ。
この設定により、AI活用の裾野が一段と広がる可能性が出てきた。
デプロイの柔軟性も強みだ。
GPU4枚以上の環境さえあれば、主要クラウドプラットフォームやオンプレミス環境への迅速な導入が可能であり、社内システムへの統合が現実的な選択肢となる。
すでに「La Plateforme」やAWSの「Amazon SageMaker」で利用可能で、今後はIBM、Microsoft、Google、NVIDIAなどの主要AIインフラとも接続される見通しだ。
「Le Chat Enterprise」が提示する未来像、AI導入のハードルを下げるMistralの戦略
Mistral AIは今回の発表と同時に、企業向けAIアシスタント「Le Chat Enterprise」の提供も開始した。
このサービスは、単なるチャットボットではなく、カスタムAIエージェントの構築や業務プロセスへの統合など、複数の機能を備えた総合型プラットフォームである。
同サービスはGoogle Cloud Marketplace上で即時利用可能となっており、今後はAzure AIやAWS Bedrockといった主要クラウドへの展開も予定されている。
これにより、企業側は自社の既存インフラに合わせた形でAI活用をスタートしやすくなる見込みだ。
競合各社がフルスタックなAIソリューションを次々と打ち出す中で、Mistralはオープン性とコスト効率を武器に異なるポジションを築こうとしているようだ。
特に中小企業にとっては、高性能AIを手頃な価格で利用できる選択肢として、評価が高まりそうである。
今後は実際の導入事例や、モデルのアップデート情報がどの程度の頻度と規模で提示されるかが注目される。AIの民主化を掲げるMistralの次の一手が、市場全体にどのような波紋を広げるのか、引き続き注視していきたい。