イーサリアムL2の完全分散化へ　プルーフシステム強化案

2025年5月5日、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏は、完全分散型レイヤー2ロールアップの実現に向けてプルーフシステムの堅牢性強化が不可欠であると提案した。

ロールアップの完全分散化に立ちはだかる課題とブテリン氏の3段階セキュリティ提案

イーサリアムのスケーラビリティ課題に対処する主要な手段として注目を集めているのが「ロールアップ」だ。これは、メインチェーンのセキュリティを維持しながら、一部の処理をオフチェーンで行う仕組みであり、処理効率を飛躍的に高める。
ブテリン氏はそのロールアップにおける分散化の進行に対し、慎重なアプローチが必要であると述べた。

提案されたセキュリティモデルは、ステージ0からステージ2までの3段階で構成されている。
ステージ0はセキュリティ評議会がまだ中央集権的な性質が強い段階、ステージ1はセキュリティがやや分散化された段階、ステージ2は完全な分散化が達成され、プルーフシステムの信頼性に依存する段階となる。

ブテリン氏はステージ2への移行に際して、プルーフシステムが堅牢でなければならないと主張している。
理由は明快で、プルーフに欠陥が生じればロールアップ全体の信頼性が損なわれ、ユーザーの資産保全にも影響が及ぶからだ。

プルーフシステムの信頼性を強化するために、ブテリン氏は「proof system multi-sigs」の導入を提唱している。これは、複数の署名者によって証明の正当性を確認する手法であり、単一障害点を排除しシステムの破綻リスクを大幅に抑制する効果が期待されている。
ブテリン氏は、ステージ2導入初期においてはこのmulti-sigモデルが有効であり、数年かけて本格的な分散化を図るべきだと述べている。

さらに、L2関連の情報を集約・可視化する「L2beat」のような監査・分析プラットフォームが、プルーフシステムの成熟度やセキュリティ水準を示す指標を公表する必要があると指摘された。

今後の展望

現在、Baseがステージ1に到達したことに象徴されるように、各L2ネットワークは段階的な分散化に取り組んでいる。
今後、プルーフシステムの監査体制や評価指標が整備され、L2beatのような情報インフラが信頼性の尺度を提示することで、ステージ2に移行するL2も徐々に増えると考えられる。
特に2025年は、ヴィタリックが掲げる「インフラ強化と分散化」がEthereumエコシステム全体の中核テーマとなる予定であり、L2の成熟度に対する評価基準が一段と明確になるだろう。

ただし、完全分散化に向けた道のりは平坦ではない。フォールトプルーフやマルチシグなど、過渡的措置を経ながら、徐々にリスクの低い自立型ネットワークへと移行していく過程には、相応の技術的試行錯誤と社会的合意形成が求められる。

最終的には、L2が自律的に正当性を証明し、L1へ還元できる体制が整えば、Ethereumはスケーラビリティと分散性の両立を実現し、グローバルな基幹インフラとしての地位をさらに確立する可能性が高まる。鍵となるのは、技術だけでなく、それを社会が信頼するための透明性と説明責任の設計にあると言える。