リップル、サークルに40億〜50億ドル買収提案も拒否

米国時間2025年5月1日、暗号資産XRPに関連するリップル社が、米ドル連動ステーブルコインUSDCの発行企業サークル社に対し、40億~50億ドルの買収提案を行ったが、サークル社がこの提案を拒否したと報じられた。ブルームバーグが関係筋からの情報として伝えている。
提案額の評価が過去の企業価値を大きく下回っていたことが要因とされる。
サークル社がリップルの買収提案を拒否
ブルームバーグの報道によれば、リップル社はサークル社に対し、40億〜50億ドル(約6,000億〜7,500億円)規模の買収を打診した。これに対し、サークル社は「金額が低すぎる」として正式に拒否したという。
サークル社は2025年4月初旬にIPO(新規株式公開)の目論見書を米証券取引委員会に提出しており、独自の成長戦略の一環として上場準備を進めている最中だった。
買収提案のタイミングは、まさにその戦略の実行過程と重なっていた。
さらに、サークル社は2022年にSPAC(※1)を活用した上場計画を進めていた際、企業価値は90億ドル(約1兆3,500億円)と評価されていた。
今回のリップル提案額はそれを大きく下回るものであり、同社が不満を示すのは自然な成り行きだと考えられる。
また、サークルは発行するUSDCを通じて、ステーブルコイン(※2)市場における確固たるポジションを築いている。
USDCは現在、時価総額でテザー社のUSDTに次ぐ第2位であり、グローバルな決済手段として広く認知されている。
企業価値の源泉がこの安定的な流通と信用である以上、サークルとしては提案額に見合わないと判断するのは妥当と言えるだろう。
※1 SPAC(特別買収目的会社):
未上場企業の買収を目的に設立される法人。上場を経て資金を調達し、その後買収対象企業と合併することで、実質的な上場を実現するスキーム。
※2 ステーブルコイン:
法定通貨と価格を連動させることにより、価格変動を抑えた暗号資産の一種。USDCやUSDTなどは米ドルと連動しており、決済や送金手段として広く利用されている。
リップルの戦略と今後の行方
リップル社は、買収提案を拒否されたにもかかわらず、サークルに対する関心を失っていないようだ。
報道では、同社が今後も買収の可能性を模索し続ける姿勢を示していることが伝えられている。
リップルは2025年に入ってから、RLUSDという米ドル連動型のステーブルコインをローンチし、本格的にこの分野へ参入した。
RLUSDの浸透には流通量、信頼性、規制対応といった多くの課題が伴うが、サークルとの統合はそれらを一気に解決する近道にもなりうる。
だがこのまま交渉が失敗すれば、リップルにとっては、拒否された提案が市場から「過小評価」と捉えられ、交渉力の低下やブランドイメージの毀損につながる懸念がある。
全体として、この一連の動きは、単なる企業間のM&Aではなく、暗号資産業界の制度化・成熟化の文脈に直結している。
リップルとサークル、それぞれの動向は、業界全体の力学を象徴する鏡であり、今後の規制設計や金融機関との連携を占う重要な試金石となるだろう。