山形県企業局、送水ポンプの異常検知にAIを導入 稼働音からリアルタイム監視へ

Hmcomm株式会社は2025年4月30日、山形県企業局が管理する送水ポンプの異常検知に、AI技術を導入する取り組みを開始することを発表した。
日本国内で進む水道インフラの老朽化に対し、稼働音の解析を通じて状態を常時監視し、故障の予兆を早期に把握することを狙う。
水道インフラ老朽化に対応、AIが担う“聞き耳”の役割
Hmcommは山形県企業局と連携し、送水ポンプの稼働音をもとに異常を検知するシステムを導入した。
使用されているのは、Hmcommが開発した異音検知アプリケーション「FAST-D」である。
設備の音響データをAI常時モニタリング、分析し、従来の点検では見逃されがちだった異常の兆候を自動で捉える仕組みだ。
日本の水道インフラは老朽化が深刻化しており、維持管理の効率化と事故予防が急務となっている。
しかし、人手不足と費用低減などの理由で点検の頻度を増やすことが難しく、異常検知の遅れが課題であった。
FAST-DのようなAI技術は、そうした課題に対する実用的な解決策として注目されている。
今回の取り組みは、点検頻度の最適化と故障リスクの可視化を通じて、送水設備の運用効率を高めることを目的としている。
Hmcommは、今回の取り組みをモデルケースに、他地域への展開や、実現難易度の高い水道管の漏水検知技術の応用も視野に入れているという。
全国に広がるか、AIインフラ監視の波 「納得可能な省力化」がカギに
Hmcommが取り組むAIによる監視体制のメリットは、稼働状況をリアルタイムで把握できる点に加え、人材不足が深刻化するインフラ分野において省人化を実現できることにある。
点検作業の平準化やトラブルの未然防止は、長期的な保守コストの抑制にもつながるだろう。
山形県の事例が成功すれば、同様のニーズを抱える全国の自治体や水道事業者へと技術導入が進む可能性が高い。
AIが収集・解析したビッグデータが蓄積されれば、自治体全体のインフラ資産の健全性評価や更新計画の最適化にも寄与し得る。
ただし、そうした未来像の実現には、AIの判断に対する説明責任を担保し、現場との協調を高める仕組みづくりが不可欠である。単なる自動化ではなく、“納得可能な省力化”への転換が、今後の鍵を握ることになりそうだ。
この取り組みが単発の技術導入で終わらず、持続可能なスマートインフラ戦略の礎となるかは、今後の行政の実行力に問われるだろう。
他の自治体が後に続くかどうかも、合わせて注目していきたい。