VTuber市場、昨年度1,000億円を突破 成長をけん引するグッズ販売と多様化する収益構造

2025年4月28日、株式会社矢野経済研究所は、国内のVTuber市場に関する最新調査結果を発表した。
グッズ販売を中心に右肩上がりの成長を続けており、2025年度には前年度比120.0%の1,260億円規模になると予測されている。
VTuber市場、グッズ売上が半数超え IPとインフルエンサーの融合で収益拡大
矢野経済研究所によると、VTuber市場は2023年度に800億円の規模となり、2024年度には1,050億円、2025年度には1,260億円に達すると予想されている。
2023年度においては市場全体の55.6%にあたる445億円をグッズが占めており、ライブストリーミング20.0%(160億円)、BtoB事業16.4%(131億円)、イベント収益8.0%(64億円)を大きく上回った。
この成長の背景には、VTuberが持つ二重の特性がある。
一つは、アニメ的なキャラクターデザインによるIP(知的財産 ※)ビジネスとしての側面。
もう一つは、リアルタイムで視聴者と交流できるインフルエンサーとしての側面である。
これにより、グッズだけでなく広告や企業タイアップといった新たな収益源の開拓が進められてきた。
キャラクターの魅力がファンのロイヤリティを高め、その人気を活かしたグッズ展開が購買意欲を刺激している。
また、ライブや配信を通じたリアルタイムのコミュニケーションが、視聴者との強固な関係構築につながっており、VTuberの存在感は他のデジタルコンテンツとの差別化要因として機能している。
※IP(Intellectual Property):著作物・発明・商標・デザインなど、創作された無形の財産のこと。ここではキャラクターのデザインや名称など、ブランドとしての資産を指す。
属人性のリスクと多角化の波 VTuberは“エンタメの枠”を越えるか
VTuber市場は今後、単なる配信収益から脱却し、収益モデルのさらなる多様化が進むと見られる。
近年では、キャラクターを起用した企業広告や、オリジナルグッズによる定期販売モデルなどが広がっており、BtoBビジネスにおける価値も高まりつつある。
一方、デメリットも無視できない。
VTuberの収益は依然として個人に依存した構造が多く、タレント本人の健康状態や炎上リスク、また所属事務所との契約トラブルなどが直接的な収益低下につながる脆弱性を抱えている。
今後、VTuber市場は単なるエンタメ領域にとどまらず、より広範な業界との連携を深めていくと見られる。
VTuberという存在が「誰がやっているか」ではなく「どんなキャラが、どう表現するか」に重きを置くモデルである以上、属人的なリスクを下げながらも企業のメッセージを柔軟に届けられるという利点がある。
この強みを活かした戦略として、イベントやメタバース上での展開、国際展開なども視野に入っており、今後はさらなる領域への進出が期待されている。
矢野経済研究所 プレスリリース:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3806