韓国で土砂崩れ救助にAIドローンと通信網活用へ 2029年までに次世代災害対応システムを構築

2025年4月29日の報道によると、韓国で土砂崩れによる埋没事故の迅速な救助を目的とした新たな研究プロジェクトが開始されたという。
AIドローンと移動通信網を駆使したリアルタイム救助システムの開発が進められているようだ。
気候変動が生む災害リスクにAIで対応 リアルタイム救助を可能にする技術とは
韓国では近年、気候変動による集中豪雨や山火事の影響で、土砂災害の発生件数が急増している。
2021年に54件だった発生件数は、2023年には459件へと約8.5倍に増加した。
このような背景を受け、韓国政府は民間と大学が連携する新たな技術開発プロジェクトに着手した。
中心となるのは、AI技術を活用したリアルタイムの災害対応システムである。
プロジェクトを主導するのは、韓国のAI専門企業「トゥービーユニコーン(TOBEUNICORN)」であり、忠南大学産学協力団もコンソーシアムとして参加している。
今後5年間で総額約50億6000万ウォンの予算が投入され、2029年までに実用化を目指す。
この取り組みでは、災害発生直後にマルチAIドローンを投入し、被災現場に緊急通信網を構築することで、迅速な状況把握と救助活動を支援する。
システムにはオンデバイスAI(※1)とクラウドAI(※2)を合わせた「エッジ・クラウド協業システム」が使われている。
この仕組みにより、従来の通信環境が破壊された災害現場でも、精度と速度を両立した対応が可能になると期待されている。
※1 オンデバイスAI:クラウドを介さず、端末自体でAI処理を行う。
※2 クラウドAI:現場の映像やデータをその場で処理し、必要な情報をリアルタイムでモニタリング可能なエッジ・クラウド基盤のAIプラットフォーム。
災害救助の常識を変える可能性と、今後の社会実装への課題
このプロジェクトは、単なる技術実証にとどまらず、今後の災害対応におけるパラダイムシフトを示唆している。
AIドローンによる即時展開型の通信網構築は、被災者との連絡手段を確保すると同時に、救助チームの活動効率も大幅に高めると見られる。
特に山岳部や孤立地域では、人力や従来の装備では到達が難しいケースも多いため、空からの即応対応は重要な鍵になると考えられる。
一方で、AIによる判断が人命救助の成否に関わる場面も想定されることから、制度設計や責任所在の明確化など、社会実装に向けた課題も浮上する可能性がある。
韓国国内での成功事例が確立されれば、日本を含む他国への技術展開も現実味を帯びてくる。
国民の生命と財産を守る新たなインフラになり得る、AIと通信の融合による次世代救助モデルに、今後も注目していきたい。