国際通貨金融委、貿易リスクへの懸念を表明 AIに関する議論不足も指摘

2025年4月25日、国際通貨金融委員会(IMFC)は、貿易摩擦の激化が成長鈍化と市場の不安定化を招いているとの認識を示し、困難な国際環境を乗り切る上で国際通貨基金(IMF)の役割が不可欠であると強調した。さらに、AI(人工知能)など緊急性の高い課題について、議論が十分に行われていない現状にも言及があった。
「世界経済は岐路にある」 貿易と成長の両立にIMFの関与を再確認
今回のIMFC会合では、加盟各国が貿易摩擦の深刻化による世界経済への影響について共通の懸念を示したとみられる。
委員会議長声明では、「世界経済は重要な岐路にある」との表現が用いられ、成長の鈍化や不確実性の高まり、金融市場の安定性リスクが強調された。
これに対し、IMFの支援機能が重要であるとの認識が改めて共有され、各国はIMFが果たすべき「貿易と成長の拡大」といった中核的使命への注力を支持した。
為替相場に関する既存の国際的コミットメントも再確認され、加盟国の経済規模や役割をより的確に反映する形でのクォータ(出資割当額 ※)見直しにも賛同が集まっている。
IMFC議長を務めるサウジアラビアのジャドアーン財務相は、「IMFは今後も成長促進に向けた支援を続けるべきだ」と表明し、とりわけ低所得国を中心に拡大する債務の脆弱性が依然として最優先課題であると述べた。
IMFのゲオルギエワ専務理事は、ブリーフィングの中で、現在の地政学的な緊張がAIを含む重要課題の国際的議論を阻んでいる現状に触れ、「AIに関する議論は十分に行われていない」と率直に認めた。
その上で、加盟国間でオープンな意見交換ができたことには一定の成果があったとしつつ、「われわれは依然として困難な時期にある」との見解を述べた。
※クォータ:IMFにおける各国の出資比率を指し、資金拠出や投票権の基準となる。経済規模の変化に応じた見直しが求められている。
AI議論の欠如に危機感 地政学的対立が国際協調の壁に
今回の会合で見逃せないのは、AIをはじめとする先端技術への対応が後回しにされている現状だ。
ゲオルギエワ専務理事の見解は、テクノロジーのグローバル・ガバナンスにおいて各国間の足並みが揃っていないことを象徴している。
AIはすでに経済構造や雇用、市場モデルに多大な影響を与えているが、それに対応する国際ルール作りは未成熟だ。特にWeb3やブロックチェーンなどの分散型テクノロジーとの接点が今後議題化されるかどうかも不透明である。
このままでは、国際金融の安定性とテクノロジーによる競争力の維持という二つの課題が乖離し、政策の遅れがさらなるリスクを招く可能性も否定できない。
次回以降の会合では、AIをはじめとする技術革新に関する議論の深化が期待される。