NFTで観光振興、出雲市と実証実験 三菱総研がデジタルスタンプ導入

2025年4月24日、三菱総合研究所と島根県出雲市は、NFT技術を活用した観光振興のフィールド実験の実施を発表した。
出雲神話を題材に、先端技術と文化資源を融合させたデジタルスタンプラリーを展開する。
NFTと神話の融合で観光を振興
三菱総合研究所と出雲市は、NFT(※)を活用した観光振興のフィールド実験を2025年中に開始する。
舞台は出雲市内24か所に点在する観光地で、参加者はスマートフォンを用いてデジタルスタンプを集めていく。
スタンプはすべて出雲神話をテーマとしており、出雲市出身の『ファイナルファンタジー』シリーズアートディレクター・直良有祐氏がデザインを担当する。
この実験には大阪・関西万博で活用されている「EXPO2025デジタルウォレット」が活用されており、ブロックチェーンにはアプトスネットワークを採用している。
実験の主な目的は、観光客の移動経路や訪問傾向などの周遊データを収集・分析し、地域の観光政策に資するデジタル施策の有効性を評価することにある。
また、デジタルスタンプ収集によって特典を提供し、旅行者の関心を喚起する仕掛けも組み込まれている。
5種類のスタンプすべてを集めた参加者には、特別なデジタルスタンプが授与される仕組みだ。
三菱総合研究所は実験結果を踏まえて他地域への展開も視野に入れているとし、デジタルを通じた地域経済の活性化と観光施策の次世代化を目指している。
※NFT(非代替性トークン):
ブロックチェーン上で発行される、唯一無二のデジタル資産。画像や動画、ゲームアイテムなどの所有証明として機能し、観光分野では収集型の施策に活用され始めている。
観光へのNFT活用のポテンシャル
今回の実験を通して、三菱総合研究所はNFTなどのWeb3技術を観光サービスに応用することのポテンシャルを探り、デジタル技術活用の有効性を明らかにする姿勢だ。
NFT技術を活用した観光振興の試みには、文化資源とデジタル技術の融合によって、既存の観光資源に新たな付加価値を与えることができるというメリットがある。
また、スタンプラリーによって得られる周遊データの分析は、観光政策の精度を高める有効な手段となり得る。訪問傾向の可視化は、混雑緩和や施設配置の最適化、広告戦略の見直しなど、実務的なインパクトを生む可能性があるだろう。
一方で、NFTという技術の持つ参入障壁はいまだに残っている。
一般観光客の中には、NFTやブロックチェーンに対する知識が乏しい人も多いと考えられるため、仕組みそのものが理解されにくい場合がある。
そのため、実際の効果については、慎重に見極める必要があるだろう。
NFTという新興技術を観光資源と結びつける動きは、地域ごとの特性に即した観光DXのあり方を模索するうえで示唆に富んでいる。
今後、出雲市で得られた知見が他地域に応用されることで、NFTを核とした観光マーケティングが広まる可能性もあるだろう。