生成AIが国家公務員の業務改革に貢献へ 警察庁が長時間労働の是正に向けた活用検証を開始

2025年4月24日、日本国内で警察庁が生成AIの業務活用に向けた検証結果を公表したと報道された。国会答弁案の草案作成や犯罪グループの関係性分析といった領域で、国家公務員の長時間労働を是正する手段としての可能性が示された。
国会答弁案の自動草案作成と犯罪分析に生成AIを活用 国家公務員の働き方改革に向けた一手
警察庁は、国家公務員の長時間労働を解消するための対策として、生成AIの業務導入を検討している。実際に、2024年4月から、生成AIを用いて答弁案の草案を作成する実験が行われていた。
背景には、従来から問題視されている過重な労働負担の是正がある。特に国会答弁案の作成業務は時間と精度が求められる負荷の高い作業であり、効率化の余地が大きいとされてきた。
そして今回、国会答弁案の作成について、文章の精度には依然として課題が残るものの、草案レベルであれば生成AIを活用できる可能性が確認されたことが発表された。
構成力や論理性において一定の水準を満たす出力が得られており、実務補助としての有用性が見えてきたと言える。
また、匿名性と流動性の高い犯罪グループ、通称「トクリュウ」(※)に関する分析への応用だ。生成AIは、大量のテキスト情報をもとに、関係性や行動パターンの類似性を抽出・可視化する機能を持つ。この技術を活用することで、従来は人的リソースの限界がボトルネックとなっていた複雑な情報解析の自動化が期待されている。
※2 トクリュウ:「匿名・流動型犯罪グループ」の略称で、SNSや暗号化通信アプリを用いて組織される、実態のつかみにくい新型犯罪集団の総称。警察庁が重点的に分析対象としている。
業務効率化と倫理の狭間で問われるAI活用の是非 今後の展望と専門家の指摘
警察庁は今回の検証結果を踏まえ、生成AIの導入範囲を今後拡大していく方針を示している。
すでに一部業務では試験的に導入が進んでいるとみられ、2025年度以降には他の官公庁にも波及する可能性がある。業務の効率化が進めば、国家公務員の労働時間短縮と精神的負担の軽減につながるだろう。
一方で、生成AIの導入には慎重論も根強い。
AIによる文章生成は便利である反面、情報の正確性や表現の公平性が担保されない場合がある。
さらに、AIが出力した情報を人間がどこまで信用するかという問題も無視できない。人手による最終確認は不可欠であり、現段階では“補助的ツール”としての位置づけが妥当である。
また、倫理的な課題も浮上している。
公務員の業務にAIを導入する場合、透明性の確保や責任の所在明確化が求められる。そのため、ガイドライン整備や教育体制の構築が並行して進められる必要があるだろう。
総じて、生成AIの導入は、国家公務員の業務効率化や労働負担の軽減に寄与する可能性がある一方で、情報の正確性や倫理的な課題にも慎重に対処する必要がある。
今後の展開においては、技術の進化とともに、適切な運用体制の構築が求められるだろう。