日立と電通、生成AIで食品ロス削減に挑む　「気まぐレシピ」が提案する流通革命

2025年4月23日、日立製作所と電通、電通デジタルの3社が、生成AIを活用した食品ロス削減サービスの開発に向けて戦略的協業を開始したと発表した。第一弾は、スーパーで売れ残りそうな食材を予測し、最適なレシピを提案する「今日の気まぐレシピ」だ。

生成AIがスーパーを変える　「売れ残り予測×レシピ提案」の新しいアプローチ

日立と電通の協業は、生成AIを軸とした生活者向けサービスの創出を目的に掲げており、プロジェクト名は「AI for EVERY」と名付けられた。
第一弾の取り組みである「今日の気まぐレシピ」は、食品ロス削減という社会課題の解決を目指している。

このサービスは、日立の技術によってスーパーで売れ残りが予測される食材を特定し、電通のクリエイティブな生成AIがその食材をもとに家庭向けのレシピを考案するというものだ。こうして生まれたレシピは、店頭のデジタルサイネージやスマートフォンアプリを通じて来店者に提案される。
買い物客にとっては、偶然の出会いのようなレシピ提案であり、食材の購買を促進すると同時に、余剰在庫の解消にもつながる。

背景には、日本国内で年間約600万トンに達する食品ロス問題がある。これは環境負荷の増大や経済的損失を生み出す要因となっており、政府や企業による削減努力が続けられてきた。
生成AIによる予測と提案というアプローチは、こうした取り組みに新たな視点をもたらすものと考えられる。

生成AIの社会実装が拓く未来　食品ロス対策から広がるサービス展望

今回の協業は、単なるレシピ提案に留まらず、日立と電通が持つテクノロジーとクリエイティブの融合による新たな生活支援のかたちを模索する試みでもある。サービスは2025年内の提供を目指しており、その後は銀行、保険、不動産など生活者との接点が多い業界にも応用される見通しだ。

AIによる売れ残り予測は、過去の販売データや消費傾向を解析して行われる。さらに、電通が蓄積してきたクリエイティブ領域の知見を学習したAIは、生活者が思わず試したくなるような魅力的なレシピを生成するという。

この仕組みによって、日常の買い物体験がよりパーソナライズされ、同時に廃棄リスクのある食材の消費が促進される。消費者にとっては無駄なく賢い買い物ができるようになり、小売業者にとっては在庫管理の最適化につながる。ただし、AI技術の進展に伴い、倫理的課題やプライバシーへの懸念が今後顕在化する可能性もある。こうした課題に丁寧に向き合いながら、社会全体での理解と受け入れを広げていくための環境整備が不可欠だ。
生成AIは今、リアルな社会課題に本格的に踏み込む段階へと突入しつつある。