名鉄バス、AIで運行管理を革新 「Optium」による交番表・乗務行路表の自動化を本格導入

2025年4月22日、ALGO ARTIS(アルゴ・アーティス)は名鉄バスと共同で、バス運行に必要な交番表と乗務行路表をAIで自動生成するシステムを開発したと発表した。
本システムには、AI最適化ソリューション「Optium(オプティウム)」が活用されており、業務効率化とコンプライアンス強化が期待されている。
複雑化するバス運行管理 AI導入で属人化からの脱却を目指す
交番表や乗務行路表の作成は、バス運行の要である。特に名鉄バスのような大規模運行会社では、ダイヤ、運転士数、車両数に加えて、営業所ごとのルールや運転士の経験値など多くの変数が存在する。
これらを踏まえたスケジュール作成は熟練者に依存しており、1日分の交番表を作るのに最大8時間を要していた。
こうした状況を打開するために導入されているのが、ALGO ARTISのAI最適化ソリューション「Optium」である。
両者のプロジェクトは2023年4月に始動し、2025年2月には豊田営業所で乗務行路表の運用を開始、翌3月にはさらに2営業所にて交番表の本格稼働に至った。
AI導入により、勤務需要に応じて労働条件や運転士のスキル、公休出勤条件などを自動で分析し、約10分でバランスの取れた計画案を生成できるようになった。
交番表の作成時間は従来の3〜4時間から約半分に短縮され、乗務行路表の作業時間についても、ダイヤ改正ごとの約3週間から1週間に短縮された。
また、Optiumは法令・労使協定・社内ルールの順守状況を自動でチェックする機能も備えており、違反の可能性がある場合には即座にアラートを出す。
これにより、担当者による見落としや属人的判断のリスクを軽減し、コンプライアンスの強化にもつながっている。
業務の標準化と持続的成長 他営業所への展開と今後の技術進化
名鉄バスとALGO ARTISの取り組みは、今後さらに多くの営業所へ展開される見通しだ。
属人化からの脱却と標準化を実現することで、長期的には運行の安定化と人材活用の最適化が期待される。特に、業界全体で深刻化する運転士不足への対応策として、AIによる効率化は有効な選択肢となり得る。
Optium自体のアルゴリズムも進化していくと考えられる。蓄積された運行データを学習させることで、より精度の高いスケジューリングが可能になり、予測的な計画立案や突発的トラブルへの迅速な対応にもつながるだろう。
他の交通事業者への横展開や、物流・鉄道業界への応用も視野に入る。
一方で、導入にあたっては現場の理解と教育が不可欠であり、AIに全てを委ねるのではなく、適切な監視と運用設計が求められる。完全な自動化を目指すのではなく、AIと人間の協働によるハイブリッドな業務体制が今後の標準になる可能性が高い。
AI技術の進化に伴い、公共交通の運営はさらに柔軟で合理的なものへと変化していくと考えられる。
今回のAI活用は、日本の交通インフラに新たな価値をもたらす技術の一例として、注目され続けるだろう。