ハローワークにAI導入、求職支援が変わる 厚労省が全国展開視野に実証開始へ

2025年4月22日、厚生労働省は、ハローワークにおける職業紹介業務へAIを導入する方針を公表した。求職者満足度の向上と業務の効率化を目的とし、9月から全国10カ所で実証実験を行い、将来的には全国展開を目指す。
職業紹介にAI活用、求職者ニーズに即応する新体制へ
ハローワークにおける業務はこれまで、職員が求職者の希望条件を聞き取り、膨大な求人データベースから手作業で該当企業を抽出する手法が主流だった。ベテラン職員の経験と判断力に依存する側面が大きく、新人職員の場合、適切な提案までに時間を要するケースも少なくなかった。
こうした背景から、厚生労働省はAI導入によりマッチング精度と業務効率を同時に高めることを決定した。
AIは過去3年間に蓄積された求人・求職データを学習し、求職者のスキルや希望条件に応じて、就職成功の可能性が高い企業を自動でリストアップする。このリストをもとに職員が提案を行うことで、迅速かつ適切な支援が可能になると見込まれている。
実証実験は2025年9月から全国10カ所のハローワークで開始される予定だ。AIによる分析と提案が現場でどの程度有効に機能するかが、全国展開の鍵を握ることになる。
AIは職員の“右腕”となるか ハローワーク改革の期待と課題
ハローワークへのAI導入には、求職者と職員の双方にとって大きな利点がある。
まず最大のメリットは、職業紹介のマッチング精度とスピードの向上だ。AIは過去3年分の求人・求職データを学習することで、傾向を分析しやすくなり、適職の提案が迅速かつ客観的に行えるようになる。
これにより、特に新人職員や経験の浅いスタッフの支援が可能となり、紹介業務のばらつきが減ると期待される。
また、職員の業務負担が軽減されることで、対応の質を向上させる余地が生まれる。
求職者の満足度向上にもつながる可能性があり、AIの提案と職員の判断を組み合わせるハイブリッド型の運用は、精度と人間味のバランスを取る上でも理にかなっている。
一方で、AIが過去のデータをもとに提案を行う以上、アルゴリズムに反映されるバイアスや偏りの存在は無視できない。たとえば過去のデータに地域的・性別的な偏見が含まれていれば、それがそのままマッチングに影響を及ぼすリスクがある。
また、AIの提案をどの程度職員が信頼し、どのように活用するかという運用設計の問題も残る。