政治的独立性揺らぐFRB パウエル議長解任論に有識者が懸念の声

2025年4月17日から18日にかけて、米トランプ大統領が自身のSNSでパウエルFRB議長の解任に言及したことを受け、著名投資家のポンプリアーノ氏やウォーレン上院議員が強く反対の立場を表明した。米金融政策の政治的独立性が問われる中、市場の信頼と安定に対する懸念が広がっている。
政治介入の兆しに高まる懸念、FRBの独立性が市場の鍵
仮想通貨投資家で起業家のアンソニー・ポンプリアーノ氏は18日、トランプ大統領がSNSで示唆したパウエルFRB議長の解任について、「「米国大統領が一方的にFRB議長を解任すべきではない」と強い懸念を示した。
ポンプリアーノ氏は、連邦準備制度(FED ※)はすでに政治化が進んでいると指摘しつつも、大統領が個人的な意見を理由にFRB議長を解任するのは「非常に悪い前例になる」として、制度的独立性の保持を訴えた。
発端は、トランプ氏が17日にSNS「トゥルース・ソーシャル」で、パウエル議長が金利引き下げに消極的であることを批判し、「一刻も早く解任すべきだ」と投稿したことにある。これに対しホワイトハウス高官は、「投稿は不満の再表明にすぎず、脅しではない」と火消しを図っているが、疑念はくすぶり続けている。
一方、ウォーレン上院議員も17日、CNBCのインタビューで「政治的な動機でFRB議長を解任すれば、株式市場は急落しかねない」と警鐘を鳴らした。
特に彼女は、「大統領が金利を自由に操作できるなら、米国は二流の独裁国家と変わらない」と強調。これまでパウエル氏の政策に批判的な立場をとってきたウォーレン氏でさえ、独立性の維持が不可欠だとの姿勢を示した点は重い。
※連邦準備制度(FED):アメリカ合衆国の中央銀行制度であり、物価安定と雇用最大化を目標に金利政策を行う。議長は大統領が任命するが、任期中の解任には正当な理由が必要とされる。
市場への波及と今後の展望、問われる制度の信頼性
今回の騒動が与える影響は、単に一人の議長交代にとどまらない。投資家心理に不確実性をもたらし、市場のボラティリティを高める要因となり得る。特に金融政策の一貫性が損なわれれば、株式市場や暗号資産市場に動揺が走ることは避けられない。
FRB議長は2026年5月までの任期があり、解任には正当な理由が必要とされている。つまり、トランプ氏のような個人の不満では法的に解任は困難とされているが、その存在を脅かす発言自体が市場に与える心理的影響は計り知れない。
ホワイトハウス内でも意見は分かれており、財務長官ベッセント氏は「解任は市場に不要な不安を与える」と反対の立場を明確にしている。こうした政府内の不一致も、市場が政治動向を過敏に読み取る土壌を生み出している。
今後、注目すべきはFRBがいかにして政治的圧力から自らを守り、独立した判断を下せるかという点だ。もし制度の独立性が形骸化すれば、それは米国のみならず、グローバル経済全体の信認低下へと直結する。制度の枠組みそのものが試されていると言えるだろう。