グーグル独禁法審理が米で開始 AI支配への懸念が焦点に

2025年4月21日、ワシントンD.C.の米国連邦地裁でグーグルに対する反トラスト法(※)違反訴訟の是正措置を巡る審理が始まった。AI時代の検索市場支配をどう規制するかが注目される。
AI時代の覇権争い 司法省は「検索の未来」にも警鐘
本訴訟では既にグーグルの市場支配が法的に認定されており、現在の争点は、どのような是正策を講じるべきかに移行している。特に注目されているのは、グーグルが検索市場において今後もAI技術を用いて圧倒的な優位性を維持するのではないかという懸念だ。
原告である米司法省は、対話型AIの進化により、従来の検索サービスとAIアシスタントの垣根が急速に消えていることを指摘している。司法省の弁護士は「裁判所による是正措置は、将来を見越したものでなければならず、AIの技術的変化を無視すべきではない」と主張した。
また、原告側は是正策の一環として、グーグルがスマートフォンメーカーやブラウザ開発企業に支払っている検索エンジン搭載契約金の撤廃も求めている。今後は、AI開発企業から証言を得て、検索とAIの融合による新たな支配構造について明らかにする構えだ。
一方でグーグル側は、今回の訴訟はあくまで検索サービスに限定されたものであり、AI製品全般は訴訟の対象外だと反論している。契約金の撤廃についても、端末価格の上昇や開発者の収益低下を招き、最終的にはユーザーに不利益をもたらすと強調した。
AIと検索市場の未来を決める裁判の行方
今後の審理で最も注目されるのは、AIと検索の融合がもたらす影響だろう。
司法省が指摘するように、生成系AIや音声アシスタントによる検索は、単なるリンク提供から情報の「生成・要約」へと進化しつつある。
グーグルがその領域でも先行している現状を見れば、同社の市場優位がさらに強まる可能性も否めない。
ただし、AIが検索エンジンの構造を再定義する中では、訴訟の適用範囲を狭く捉えるのは難しいかもしれない。規制が後手に回れば、グーグルのような巨大IT企業がAIを武器に競合他社をさらに突き放す展開も考えられる。
グーグルの契約金政策が実際に競争を阻害しているのか、それともユーザー体験の向上に寄与しているのかを、裁判所がどう判断するかが鍵になるのではないだろうか。
いずれにせよ、今回の裁判は単なる企業間の力関係を超え、検索という社会インフラの未来像そのものに影響を及ぼすだろう。
今後の展開によっては、他のプラットフォーム企業や生成AI開発者にも波及する包括的な判例となる可能性もあるため、グローバルな視点でも注視すべき動きである。
※反トラスト法:米国で企業の独占的行為やカルテルを規制する法律の総称。競争の促進と消費者の利益保護を目的とする。