スクウェア・エニックス、モバイルゲームの基盤をGoogle Cloudへ全面移行 スケーラビリティと信頼性の向上図る

2025年4月18日、Google Cloudはスクウェア・エニックスがモバイルゲームのバックエンド基盤を同社クラウドへ移行したと発表した。
国内外のユーザーに安定したサービスを提供するため、スケーラビリティや復旧性を強化する狙いがある。
GKEやCloud SQLを活用 大規模モバイルタイトルに最適化されたインフラ構築へ
スクウェア・エニックスは、増加するモバイルゲーム市場のトラフィックやプレイヤーの期待に応えるため、基盤システムをGoogle Cloudへと移行すると発表した。
これまで使用していた仮想マシンベースのシステムでは、リクエストの急増時に数万単位のアクセス処理が遅延し、スケーラビリティと柔軟性に課題があった。
移行の中核には「Google Kubernetes Engine(GKE)(※1)」が据えられており、APIの拡張に要していた数時間の作業が、現在では数十秒で完了するまでに高速化された。
また、「Infrastructure as Code(IaC)」を取り入れたことにより、インフラ構築の自動化と運用効率化も実現している。
さらに、信頼性の面では「Compute Engine」のInnoDBクラスタ構成を経て、現在は「Cloud SQL Enterprise Plus(※2)」への移行が進行中だ。
この新環境では、バックアップのためのレプリカ構築作業が自動化され、コストは最大90%削減されたという。
障害発生時の復旧時間も数十秒に短縮され、従来と比較して99%以上の時間短縮が確認されている。
今回のクラウド移行は約3年にわたる長期プロジェクトであり、2024年9月に完了した。
※Google Kubernetes Engine(GKE)とは
Google Cloudが提供するマネージドKubernetesサービスであり、コンテナ化されたアプリケーションのスケーリングや管理を容易に行う仕組み。
※Cloud SQL Enterprise Plusとは
Google Cloudが提供する高可用性・高性能のマネージドSQLデータベース。
“運用の高度化”から“戦略の再定義”へ クラウド基盤が描く新たな成長曲線
今回の全面移行は、単なる技術刷新にとどまらず、スクウェア・エニックスのゲーム戦略全体における“運用の高度化”と“市場対応力の強化”への布石と捉えられる。
クラウド環境を最大限に活用することで、今後はイベントやキャンペーン、マルチリージョン展開においても迅速な対応が可能となるだろう。
さらに、Google CloudのAI・データ分析機能との連携により、ユーザー行動のリアルタイム解析や、パーソナライズされたゲーム体験の提供が進む可能性も高い。
ただし、クラウド基盤に全面依存する以上、セキュリティとプライバシー保護の強化は継続的な課題になると考えられる。
クラウド環境の脆弱性を突いた攻撃や、誤設定による情報漏洩リスクへの対応は、今後のインフラ戦略において不可避のテーマとなるだろう。
総じて、今回の移行は運用面・技術面の進化に加え、スクウェア・エニックスがデジタルサービス企業へと再定義される契機とも言える。
今後は、開発スピードと運用安定性を両立しながら、よりパーソナライズされたゲーム体験を追求する展開が期待される。