クラーケンが24時間取引可能なFX永久先物取引を開始

米国の暗号資産取引所クラーケンは2024年4月18日(現地時間)、外国為替市場における永久先物取引サービスの提供を開始したと発表した。
これにより、EUR/USDおよびGBP/USDの通貨ペアにおいて、24時間365日取引が可能となった。
暗号資産モデルがFX市場に浸透
クラーケンが新たに導入したFX永久先物取引(※1)は、暗号資産取引における「パーペチュアル(永久)先物」の仕組みを応用したもので、取引期限を持たない点が最大の特徴だ。
これまでのFX市場は、平日のみ開場し週末には閉じるという制限があったが、今回のクラーケンの決定で、その制限を越えた取引環境が実現している。
新サービスは、法定通貨市場でより高い柔軟性と即応性を求める機関投資家やプロトレーダーを主な対象として設計されている。
クラーケンのデリバティブ部門責任者アレクシア・テオドルー氏は、「投資家は今、暗号資産、FX、株式が統合された取引体験を求めており、我々はその需要に応える準備ができている」と述べている。
現在、取引可能な通貨ペアはEUR/USDとGBP/USDの2種類だが、今後も新たなペアの追加が計画されており、対象市場の拡大が見込まれている。
また、クラーケンの発表によれば、2023年初頭からのFXスポット取引総額は54億ドルに達しており、そのうちの35億ドルは現在対象となっている2通貨ペアによるものだった。
この数字は、すでに同プラットフォーム上でFX取引が活発に行われていることを示している。
※1 永久先物取引(Perpetual Futures):
取引期限が設定されておらず、ポジションを任意の期間保有できるデリバティブ。暗号資産市場で一般的に採用されている。
クラーケンが目指す未来の取引プラットフォーム像
クラーケンはこの永久先物取引の導入を通じて、暗号資産取引所という枠組みから脱却し、より広範な金融エコシステムの中核を担おうとしている。
既に、米国上場株式やETFの手数料無料取引も提供を開始しており、ユーザーは1つのアカウントで複数のアセットクラスにアクセス可能となっている。
さらに、クラーケンはマスターカードとの提携を発表しており、これにより英国および欧州の暗号資産保有者は、世界中の1億5000万超の加盟店でデジタル資産を決済手段として使用できるようになる見通しだ。
暗号資産の実用性を高め、リアル経済との接続点を増やす試みである。
これら一連の戦略からは、クラーケンが単なる取引所ではなく、分散型金融(DeFi※2)と伝統的金融の架け橋を担う存在としてポジションを確立しようとしている姿勢がうかがえる。特に、24時間365日という取引体制は、グローバル化とデジタル資産時代の要求に応じた次世代金融モデルの一端と言えるだろう。
ただし、これは必ずしも直線的な進展にはならないだろう。
規制環境の整備と社会的受容の度合いが鍵を握る。
特に米国など主要金融市場では、暗号資産関連の制度設計に慎重な姿勢が根強いため、今後の展開には政治的・法的な要因が強く影響を与えることになりそうだ。
※2 DeFi(分散型金融):
中央集権的な金融機関を介さずに行われる金融取引の総称。ブロックチェーン技術を基盤としている。