アスター、動的報酬で進化するトークノミクス設計

2025年4月18日、日本発のWeb3プロジェクト「アスター(ASTR)」が、ガバナンス承認を経てトークノミクスの設計を再調整した。
ダイナミック・トークノミクスの本格運用と、それに伴う新たな報酬配分ルール
アスターは、2023年に従来の固定インフレ型トークノミクス(※)から、ネットワークの実利用に応じて発行量が変動する「ダイナミック・トークノミクス」へと舵を切った。これにより、トークン発行が単なる時間経過ではなく、エコシステム内の活動量に連動して決定される構造となっている。
新制度の柱となるのは、BaseStakersPartとAdjustableStakersPartという2つの報酬配分方式だ。前者はステーカーに一定割合で報酬を提供する固定枠であり、後者はステーキング状況に応じて動的に変動する報酬枠を指す。これらを組み合わせることで、ステーキング参加者にとってのインセンティブを維持しつつ、ネットワークへの貢献度に基づいた報酬分配が可能となった。
しかし制度導入後、いくつかの課題が顕在化した。具体的には、ステーキングの年利(APR)が過度に上昇・変動し、年間インフレ率が想定以上に拡大。さらにdApp開発者向けのステーキング報酬が不安定になったことが懸念されていた。これらの問題を受け、今回、BaseStakersPartが25%から10%へと縮小され、AdjustableStakersPartが40%から55%へと増加する形で調整された。ネットワークの需要とステーキングの実態をより反映する構造へと変化したかたちだ。
※トークノミクスとは:仮想通貨の経済設計を指す言葉で、供給量や配分、インフレ率、使用用途などを通じて通貨の価値を体系的に構築する仕組みのこと。
トークン価値の安定化を目指す新方針と、エコシステムへの中長期的な影響
アスターが目指すのは、単なる一過性の報酬設計ではなく、ネットワーク全体のサステナビリティを重視した経済モデルである。今回の調整によって、トークンの発行量はステーキングへの参加状況とネットワーク内アクティビティをより直接的に反映するようになった。これは、過剰インフレの抑制に加え、ユーザーの行動に応じた合理的なリターンを設計する上でも有効な方策といえる。
また、トランザクション手数料の一部をバーン(焼却)する仕組みも継続されており、供給量を段階的に抑える動きも継続されている。これにより市場への供給圧力を軽減し、中長期的なトークン価値の維持を目指す考えだ。
今回のアップデートは、単なる技術的調整ではなく、Web3の経済基盤としてアスターがどのような価値を提供するかを示すシグナルでもある。開発者や投資家にとっては、今後のネットワーク拡張やユースケースの増加によって報酬設計がどう進化していくかを見極める材料となるだろう。反応的かつ持続可能なトークノミクスがどこまで実用的に機能するか、その行方が注目される。