LIXIL、太陽光発電できる遮光ブラインドを開発 スマホ9台分の充電に対応、法人施設向けに展開へ

LIXILは2025年4月14日、遮光と太陽光発電の両機能を備えた世界初のロールスクリーン型太陽光発電設備「PVロールスクリーンシステム」の受注を6月から開始すると発表した。関東エリアの法人・公共施設を対象に導入を進め、順次提供地域を拡大するという。
省エネと防災、そして環境負荷の軽減に貢献すると注目されている。
ブラインド1枚で発電、施工も簡易 新しい窓辺の選択肢
LIXILが発表した「PVロールスクリーンシステム」は、遮光ブラインドに太陽光発電機能を組み込んだ先進的な製品である。
1枚で最大9台のスマートフォン、または3台のノートPCに相当する電力を1日で供給できる性能を備えるという。
同製品は、ファブリック仕様とスケルトン仕様の2タイプが用意され、用途や空間の雰囲気に応じた選択が可能。
視界の調整性や遮光性といった基本性能に加え、断熱機能にも優れ、窓との間に空気層を設けることで外気温の影響を緩和できる構造となっている。
導入にあたってのハードルも低く、既存の建物に電気工事なしで後付け可能という点が特徴だ。
施工性の高さから、法人や公共施設を中心に短期間での普及が進むと見られている。また、非常時の電源確保手段としての利活用も期待されており、災害時のレジリエンス強化につながると考えられる。
BIPV(※)が設置可能な国内既築ビル(約1.4億平方メートル)に本製品を全面導入した場合、建設セクターの2030年目標に掲げるCO₂排出削減量の約12%に相当する効果が見込まれるという。
これは既存インフラの利活用によって、低コストかつ高効率に脱炭素社会の実現に貢献し得ると考えられる。
環境負荷軽減とBCP対策を両立 今後の課題と展望
従来のBIPV製品と比べて、可動性や設置の容易さ、視界の自由度といった点で優位性を持つ本製品は、環境意識の高まりとともに導入意欲を高めるだろう。
特にBCP(事業継続計画)対策を進める企業にとっては、発電機能を持つブラインドの導入は合理的な選択肢となり得る。
一方で、ブラインドという特性上、日照の角度や天候に左右されやすく、発電量が安定しにくいことが想定されるだろう。
用途が室内窓面に限定されるため、屋根全面に設置する太陽光パネルと比べると発電効率やスケールメリットは限定的と見られる。
また、製品自体の価格や耐久性、長期的なメンテナンス性についても、今後の導入判断に影響を与える要素となり得るだろう。
施工の容易さを活かしつつ、どの程度のエネルギー削減効果が実際に得られるかを明確に示すことで、導入側の信頼を獲得できるかどうかが普及の成否を分ける要因となるだろう。
しかし、本製品はエネルギー転換時代における「窓辺の再定義」とも言える存在であることは確かだろう。
エネルギーと建材の融合が持つ新たな可能性が、都市部の既存ビル改修やゼロエネルギービル(ZEB)化の推進に繋がることに期待したい。
※BIPV(建材一体型太陽光発電)とは、建物の屋根や外壁など建材自体に太陽光発電機能を組み込む技術で、再生可能エネルギーと建築設計を融合させる手法。