AIがルートを最適化するオンデマンド交通「すいっとカナザワ大野町」、金沢市で試験運行スタート

2025年4月14日、金沢市大野町でAIが最適ルートを割り出すオンデマンド型交通サービス「すいっとカナザワ大野町」が試験運行を開始した。住民の通院や買い物といった移動支援を目的に、地元主体の運営で最大8か月間の導入が予定されている。
AIが導く新たな交通手段、地域のニーズに即応する仕組みとは
金沢市大野町で始まった「すいっとカナザワ大野町」は、AIを活用したオンデマンド交通(※)サービスである。従来の路線バスと異なり、時刻表や固定ルートを持たず、利用者の予約情報に応じてAIが最適な経路を算出し運行する仕組みだ。
利用者は、スマートフォンの専用アプリまたは電話で乗車を予約する。これにより、AIが予約内容をもとにリアルタイムでルートを調整し、約50カ所に設けられた停留所の中から最も効率的な経路を導き出すという。利用料金は1回あたり200円から300円に設定されており、価格面でも地域住民が利用しやすい条件となっている。
運営主体は地元の町会連合会で、企業や医療機関などからの協賛金を得てサービスを実現した。高齢化が進む地域において、日常の足を確保するだけでなく、交通手段を持たない人々の生活の質を高める取り組みとして注目を集めている。
特に、免許を返納した高齢者にとっては、自宅から医療機関やスーパーへの移動手段として期待が寄せられている。
※オンデマンド交通:利用者の需要に応じて運行される交通サービスの総称。予約制でAIやアルゴリズムがルートを最適化する仕組みを持ち、固定ダイヤの公共交通と比べて柔軟性が高い。
「すいっとカナザワ大野町」試験導入が示す可能性と課題
「すいっとカナザワ大野町」が導入された背景には、地域交通の維持における課題があると考えられる。
特に地方都市では、採算性の問題から路線バスの本数やルートが縮小傾向にあり、交通弱者の移動手段の確保が喫緊の課題とされてきた。
そうした中、需要に応じて柔軟に対応できるオンデマンド型交通は、代替手段として有効だと考えられている。
住民からは、オンデマンド交通に対する期待や課題への声が上がっているという。
「免許証を返納したが移動が不便で、買い物などで困っていた。必要なときに利用できるのは非常にありがたい」と利便性を評価する意見がある一方で、「病院の診察が予定どおり終わらないことがあり、時間通りに乗れるかどうかが不安」と、運行とのタイミングに懸念を示す声もあるようだ。
今後の焦点は、持続可能な運営体制の構築と、利用者数の安定的な確保にあると考えられる。
運行データを通じてAIの精度を高めながら、需要予測と車両の最適配置を強化していくことが、拡大展開のカギとなるだろう。自治体主導だけでなく、民間企業や地域コミュニティとの連携による“ハイブリッド型”の交通インフラとしての定着が期待されている。