アルファベット、第7世代AI半導体「アイアンウッド」を発表 推論性能が倍増

2025年4月9日、米グーグル親会社のアルファベットが、第7世代のAI向け半導体「アイアンウッド」を発表した。推論処理を高速化する本製品は、前世代と比べて電力効率が2倍に向上しており、AIアプリケーションの実用性を大きく引き上げる可能性を持つ。
AI推論に特化した新半導体「アイアンウッド」、電力効率で前世代の2倍に
「アイアンウッド」は、AIアプリケーションにおける推論処理、特にユーザーからの入力に対して瞬時に応答を生成するプロセスを加速させる点が大きな特徴である。
この「アイアンウッド」は、2024年に発表された第6世代「トリリウム」と比較して、電力量あたりの性能が2倍に向上しているという。
推論処理では、AIが学習した内容をもとに大量のデータから適切な情報を抽出・提示する「クランチング」と呼ばれる工程が鍵となる。これを効率的に処理することで、チャットGPTのような対話型AIの応答速度や精度が一段と向上する。
アルファベットのアミン・バダット副社長は、「推論の相対的な重要性が非常に高まっている」と述べており、同社がクラウドインフラにおけるAI活用の主導権を握る姿勢を強調した。
Googleはこのアイアンウッドを、自社のAIモデル「ジェミニ」シリーズにすでに組み込んで運用している。
ただし、製造を担当するサプライヤーの詳細は公表されていない。
AI半導体市場に新たな波、アルファベットの戦略と今後の可能性
AI半導体は現在、世界中の大手テック企業がしのぎを削る最前線の領域である。
NVIDIAがGPUで圧倒的なシェアを持つ中、アルファベットは自社設計のカスタムチップで独自路線を追求してきた。
「アイアンウッド」はその流れを受け継ぐ進化形であり、同社がAIのトレーニングから推論処理までを一貫して自社インフラで賄おうとする意図が見える。
AI推論の高速化は、検索、音声アシスタント、生成AIといった幅広い分野で恩恵をもたらす。特に今後の重要なトレンドとされる「マルチモーダルAI」においては、画像・音声・テキストなど多様な情報を瞬時に処理するため、高効率な推論チップの存在が不可欠となる。
今回の発表は、Googleのクラウドサービスにおける競争力を高め、顧客獲得にも直結すると見られる。
今後は、アイアンウッドの外部提供が行われるか否かも注目される。
これまでGoogleは、自社クラウドを利用する企業向けにTPU(Tensor Processing Unit)を限定提供してきたが、アイアンウッドがその枠を超えて市場に広がれば、AI半導体市場の勢力図が再び塗り替えられる可能性がある。