日産、英ウェイブと提携し次世代プロパイロット開発へ AI技術で運転支援を革新

日産自動車は2025年4月10日、英国のAIスタートアップ企業ウェイブ・テクノロジーズと提携し、次世代運転支援システム「プロパイロット」の共同開発を発表した。新システムは2027年度に搭載車両の発売が予定されている。
AIで進化する運転支援 日産とウェイブの提携がもたらす革新
日産とウェイブ・テクノロジーズの提携は、自動運転技術の進化を見据えた戦略的判断に基づくものだ。
ウェイブは、ソフトバンクグループが主導した資金調達ラウンドで、欧州AIスタートアップとして過去最大規模となる10億ドル(約1470億円)を調達している。
この資本力と技術力が、日産の開発力と結びつくことで、業界の常識を覆す次世代の運転支援システムが誕生しようとしている。
提携の中心となるのは、ウェイブが開発したAIドライバーソフトウェア(※1)だ。これは、複雑な実世界の運転環境において人間に近い判断を下せるよう設計されており、既に英国・米国・ドイツにおける実証実験を通じて性能が検証されてきた。
これまでフォード車などでのテスト実績があるものの、大手メーカーによる正式採用は日産が初となる。
日産は2016年に初代「プロパイロット」を導入し、2019年には高速道路におけるハンズフリー運転を可能にする第2世代を展開してきた。この進化をさらに加速させる形で、2027年度には新たなプロパイロットを搭載した車両の市場投入が予定されている。
ウェイブのソフトウェアを中核に据えることで、AIによる高度な判断と操作が可能となり、運転者の負担軽減と安全性の大幅な向上が期待されている。
※1 AIドライバーソフトウェア:人工知能が車両の制御を支援・代行するシステムであり、交通状況をリアルタイムで判断し、加減速やハンドル操作を自動で行う機能を持つ。人間の運転行動を模倣し、より自然で安全な運転を実現することが目的。
業界再編を加速させるAI連携 日産の先手と今後の布石
AI技術の進化に伴い、自動車業界では運転支援機能の高度化が急務となっている。特に、AIの導入による差別化が各メーカーの競争力を左右する時代に突入しており、日産の今回の提携は、グローバルな技術競争において一歩先を行く布石となる。
ウェイブの技術は、これまでの実証実験で信頼性を示してきた。フォード車をベースとしたテストでは、都市部・郊外・高速道路など多様な環境での運転データを蓄積しており、この実績が日産との正式提携につながった。今後は、この実験結果を活用し、日産車に最適化された運転支援機能の開発が進められる見通しだ。
一方、2027年度に予定されている新プロパイロット搭載車の発売は、日産の長期的な技術戦略の中核を成す。高齢化社会への対応、安全性への需要拡大、そしてカーボンニュートラル(※2)への転換という業界全体の課題に応えるためにも、自動運転技術の高度化は不可欠となっている。
ウェイブとの連携によって得られるノウハウとスピード感は、他社に対する明確な優位性となるだろう。
今後、日産がこの提携を通じてAI領域における独自ポジションを確立し、他の国内外メーカーとの競争をリードできるかが注目される。
AIが駆動する次世代モビリティの行方は、単なる技術革新にとどまらず、産業構造そのものを変える可能性を秘めている。
※2 カーボンニュートラル:温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにする考え方であり、自動車業界では電動化や再生可能エネルギーの活用を通じた実現が求められている。