「アットコスメ」、AIで口コミ分析 本格コンサル事業で市場に新風

2025年4月8日、株式会社アイスタイル(本社・東京都港区)は、AIを活用した口コミ分析による新たなコンサルティング事業を開始したと発表した。国内最大級のコスメサイト「@cosme(アットコスメ)」のデータを活用し、企業向けにマーケティング施策や商品開発支援を行う。
2190万件の口コミをAIが解析 “生の声”を武器にブランド戦略を支援
アイスタイルは、CXコンサルティング企業NODEと共同出資で新会社「アイスタイルデータコンサルティング」を設立し、本格的なデータ活用型のコンサルティング事業に乗り出した。
資本金は1000万円で、出資比率はアイスタイルが66%、NODEが34%。代表にはアイスタイル執行役員の天野博之氏が就任した。
同社が提供を開始したのは、AIを活用した口コミ分析ツール「アットコスメ コ・パイロット(copilot)」である。
これは、アットコスメ上に蓄積された約2190万件の口コミデータをもとに、消費者の声を多角的に解析するツールであり、ブランド・属性・投稿期間などを指定して抽出・分析が可能だ。
さらに、特定のユーザー像を導き出す「ペルソナ生成機能」も備えており、これまで曖昧だったターゲット像の明確化に貢献する。
料金体系は、ライトプラン(月額25万円)では口コミ検索と基本分析のみ、スタンダードプラン(月額55万円)でペルソナ生成まで対応、さらにビジネスプラン(月額85万円)では最大30アカウントでの利用が可能となる。
月間ユーザー数1760万人、登録商品数40万件という、アットコスメの持つ圧倒的なスケール感を活用できる点が競合との差別化要因だ。
天野氏は「販促プロモーションにとどまらず、商品企画やブランド戦略にも踏み込んだ支援が可能になる」と語っており、従来の枠を超えた包括的なマーケティング支援が今後の主軸となる見通しである。
初年度で10社導入を目指す コスメ業界に広がる“データ主導”の潮流
化粧品業界では、近年、消費者の購買行動がオンライン中心に移行する中で、リアルな口コミやレビューの重要性が飛躍的に高まっている。
従来のアンケートや対面調査では捉えきれなかった「本音」を可視化できるデータの存在は、マーケティング戦略において大きな武器となりつつある。
実際に、資生堂ジャパンがこのツールの先行利用を開始しており、同社の担当者である松村美穂氏は「従来よりもスピーディーに施策の改善サイクルを回せるようになった」と評価する。
新会社では、2025年度中に10社への導入を目標としており、今後は美容業界以外のライフスタイルブランドへの展開も視野に入れているという。
さらに5年後には年間売上20億〜30億円規模を見込んでおり、専任アナリストの採用や外部連携によるサービス拡充も計画中だ。
AI技術の進化に伴い、口コミという最も身近なデータを起点に、企業と生活者の関係性が大きく再定義される時代がすでに始まっていると言える。