アップル、AI分野で異例の幹部刷新　ビジョンプロ幹部をSiri開発の新責任者に

2025年3月21日の報道によると、米アップルが人工知能（AI）分野における体制を大幅に見直したことが関係者によって明らかとなった。音声アシスタント「Siri」の立て直しを図るため、ビジョンプロ開発の功績で知られるマイク・ロックウェル氏がSiri開発の新責任者に就任した。本件はアップルがAI分野での遅れを自覚し、競合に追いつくための抜本的な戦略転換であると位置づけられている。

Siriの再建狙うアップル、異例の幹部人事と組織改編を断行

アップルがAI領域において新たな一手を打った。
Siri開発の停滞と生成AI分野での競合各社との格差が深刻化するなか、同社はこれまでAI部門を統括していたジョン・ジャナンドレア氏のもとからSiri開発を切り離し、代わってマイク・ロックウェル氏を責任者に据えるという異例の人事を実施した。

背景には2023年6月に発表されたSiriの新機能のリリースが大幅に遅延しているという現実がある。
これらの機能にはユーザーデータを活用したより柔軟なクエリー実行が含まれているが、実装には技術的な課題が山積しているとされる。
こうした状況に対し、ティム・クックCEOは製品開発における即応性と実行力を重視。既にビジョンプロを成功裏に市場投入した実績を持つロックウェル氏の手腕に託す判断を下したと報じられている。

新体制下では、ロックウェル氏がソフトウェア統括責任者クレイグ・フェデリギ氏の直属としてSiriの開発を指揮することになる。
また、彼のチームからはキム・ヴォラース氏やエイミー・ヌゲント氏といった有能なマネージャーがSiri開発に合流し、プロジェクトの整理と推進力の強化が図られている。

AI競争の最前線に向けた布石、問われる迅速性と革新性

ロックウェル氏の起用はアップルがAI分野における実用主義へとシフトする姿勢を象徴している。
従来は研究重視で進められてきたSiri開発だが、現体制では製品への迅速な落とし込みが求められる。
ジャナンドレア氏は今後Siriからは外れつつも、基礎AIの研究、ロボティクス、AIテスト分野に注力する予定で、彼の専門性が生かされる配置転換との見方もある。

現在生成AI技術においてはマイクロソフトやグーグルが先行しており、OpenAIとの提携による製品投入が相次いでいる。こうした中アップルのSiriは長らく「進化の乏しい存在」と評されてきた。
新体制がこれに歯止めをかけられるかは今後の開発速度と成果次第だろう。

この刷新は投資家や市場にも波紋を広げている。AI分野での明確な戦略転換が好印象となり、アップル株価には上昇の兆しも見られた。
ただし、過度な期待が裏切られた場合の反動も想定されるため、今後数四半期にわたる実績の積み上げが鍵となる。