【AIで防ぐ“新卒と企業のミスマッチ”──退職代行を選ばせないキャリア設計へ】

2025年4月、「退職代行サービス」が若手社員の間で注目を集めています。
特に新卒入社間もない社員による利用が目立ち、社会問題としても取り上げられています。背景にあるのは、新卒社員と企業との“ミスマッチ”。
入社前と現実のギャップ、価値観の違い、職場環境への適応困難など、多くの理由が複雑に絡み合っています。

しかし、こうしたミスマッチは本当に避けられないものなのでしょうか。
AI（人工知能）を活用すれば、入社前にある程度の“適合性”を予測し、双方にとって不幸な選択を減らすことができるのではないかと考えます。

AIがもたらす「相性診断」と「価値観マッチング」

近年、AIは人の性格、価値観、志向性をデータから解析し、適職や組織との相性を可視化する技術に長けています。
たとえば、性格特性分析（ビッグファイブ理論など）や、志向性に基づくキャリアシミュレーションを用いたマッチングツールはすでに存在しています。

企業はこれらのAIツールを採用選考の補助的な材料として活用することで、候補者が「どのような働き方に幸せを感じるのか」「どのようなチーム環境で力を発揮できるのか」といった要素をより深く理解できます。
一方で求職者側も、自分自身の「職業観」「働き方の価値観」をAI診断によって把握し、自ら納得のいく選択をする手助けになります。

人事にも、新卒にも求められる「共通言語」

AIツールを使ったからといって、ミスマッチがゼロになるわけではありません。
しかし、重要なのは「対話の土台を整えること」です。
AIが提示する“相性レポート”は、企業と新卒社員の間にある期待値のズレを言語化し、共有する材料になります。

たとえば、入社前に「この会社では成果主義が重視されている」「この人は安定性と丁寧な育成を重視している」という情報をAIが導き出せれば、面談でその差異について話し合う機会が生まれます。
これは企業にとっては離職リスクの軽減に、新卒社員にとっては不安の払拭と納得感のある意思決定に直結します。

「退職代行」に至らない未来のために

退職代行を使って職場を離れる若手社員の多くは、決して“甘え”や“責任放棄”ではなく、「自分に合わない場所で消耗し続けること」に耐えられなくなった結果の選択です。
その背景には、入社前にもっと深く“相互理解”があれば防げたはずのミスマッチも多く含まれています。

今こそ、企業も新卒も「入社前の対話」を重視し、その手段としてAIの力を活用するべき時です。テクノロジーの活用は、冷たい効率化ではなく、より人間的なマッチングのための“架け橋”になるはずです。

――「退職代行が当たり前」な時代ではなく、「納得して働ける」時代へ。AIを活かしたキャリアの選択が、その第一歩となるかもしれません。