OpenAIが各国と連携する新構想「OpenAI for Countries」を発表 AIインフラの国際展開へ本格始動

米OpenAIは2025年5月7日(米国時間)、グローバルなAIインフラ構築を目的とした新構想「OpenAI for Countries」を発表した。ソフトバンクなどと推進する「Stargateプロジェクト」の一環であり、政府間連携を強化しつつ、世界各地でAI展開を本格化させる狙いがある。
各国の言語とニーズに応じたAI基盤 データセンター設置と現地対応で進むグローバル展開
OpenAIが発表した「OpenAI for Countries」は、世界的なAIインフラを整備するべく、各国政府と提携しながらAIサービスの拡充を目指す新しい取り組みである。
本プロジェクトは、OpenAI、ソフトバンク、米Oracle、アラブ首長国連邦(UAE)のMGXによる合弁会社が推進する「Stargateプロジェクト」の一部として位置づけられている。Stargateプロジェクトでは、2029年までに最大5000億ドルを投じて米国にAIインフラを整備する計画が進行中であり、テキサス州では既に10カ所のデータセンターが建設中だ。
「OpenAI for Countries」は、こうした枠組みを世界規模に拡張するものとして、まず10件のプロジェクトを皮切りに各国での実施を予定している。
現時点で参加国名は明かされていないが、参加国はOpenAIとの連携のもと、国内にAIデータセンターを設置するだけでなく、OpenAI製品を自国の言語や文化、ニーズに応じてローカライズしていく方針だ。
資金面でもこのプロジェクトは特徴的である。OpenAIだけでなく、各国政府も資金を提供する共同出資モデルが想定されており、政治的な支援体制も含めた官民連携の新しい形となる可能性が高い。
AI国際協調の布石としての意義 地政学的リスクとリーダーシップの分散を見据えた戦略か
「OpenAI for Countries」が示すのは、単なるテクノロジー導入の枠を超えた、AIの国際的な政治経済インフラとしての重要性である。
OpenAIはこれまで、米国主導のもとで急成長を遂げてきたが、世界的な信頼性と浸透度を高めるためには、各国と対等に協力関係を築く必要があると判断したと考えられる。
AIモデルのローカライズは単に言語対応にとどまらず、文化的価値観や法制度への適応も含まれる。これは、AI導入がもたらす社会的・倫理的インパクトに配慮した展開であり、現地の受容性を高めるためには不可欠な視点だ。
また、各国にデータセンターを分散設置することで、地政学的なリスク分散やサービスの安定供給といったインフラ戦略としても大きな意味を持つ。
さらに、国家が資金とインフラを共同で構築するこの仕組みは、米国一極型のAI技術支配に対する国際的な警戒感を緩和し、より柔軟な協調体制を築く道筋ともなり得る。
AI分野における「信頼」と「透明性」を国際的に担保していくための第一歩として、今回の取り組みは大きな布石になるのではないか。