AIによる創作加工に警鐘　映像作家かねひさ和哉氏が語る著作権意識

映像作家・かねひさ和哉氏が2025年5月6日までにX（旧Twitter）を更新し、自身の作品をAIで加工してSNSに投稿する行為について「控えていただけるとありがたい」と呼びかけた。アーティストの表現とテクノロジーの進化が交差する中で、創作物の権利とAI利用の是非が改めて注目されている。

アートとAIの衝突、創作物の「改変」は何を意味するのか

かねひさ和哉氏は、日本を拠点に活動する映像作家で、視覚的に洗練された演出と社会的テーマを掛け合わせた作品で知られている。独自の色彩感覚や抽象的なモチーフを特徴とし、国内外の映像祭でも高い評価を得てきた。

近年のAI技術の急速な進化により、画像生成や動画のスタイル変換といった「AI加工」が一般ユーザーにも手軽に利用できるようになった。
SNS上では、クリエイターの作品をAIに取り込んでリミックスする行為が急増しており、一部では「二次創作」として好意的に捉えられることもある。
一方で、原作者の意図やメッセージが改変されることへの懸念も根強い。

今回の投稿で、かねひさ氏はAIによる作品加工が自身の創作物の価値や文脈を損なう恐れがあるとし、控えるよう呼びかけた。
投稿はあくまで「お願い」というトーンではあったが、創作者としての強い意志がにじむ内容となっていた。

アーティストにとって、作品は単なる視覚表現ではなく、メッセージを内包する知的財産でもある。改変された作品が拡散されることで誤解や混乱を生む可能性もあり、今回の依頼はそうしたリスクへの対処と見ることができる。

テクノロジーと創作の共存へ、アート界に求められる新たなルール作り

かねひさ氏の呼びかけは、一個人の意見にとどまらず、AI時代における創作物の在り方についてアート業界全体が考える契機になっている。
AIは表現の可能性を大きく広げた一方で、従来の「作者性」や「オリジナリティ」の概念に揺さぶりをかけている。
これまではリミックス文化が一部のジャンルで広がりを見せてきたが、AI技術の登場によりその速度と規模は格段に増している。

マーケティングやエンタメの分野では、AIを使った創作が話題性を生む一方で、権利処理が追いつかないケースも目立つようになった。こうした中、かねひさ氏のように個別に使用を控えるよう依頼する動きが今後も増えると考えられる。
アートとAIのバランスを取るためには、創作者とユーザー、プラットフォームの三者が合意形成を行うルールやガイドラインの整備が不可欠だろう。

アートとテクノロジーが融合する現代において、創作と消費の境界線は曖昧になりつつある。こうした曖昧さの中で、アーティストの意図を尊重しながら、ユーザーの表現意欲とも共存するための社会的合意が求められている。