グーグルの生成AI「ジェミニ」、iPhone搭載へ協議

2025年4月30日、米グーグルが自社の生成AI「ジェミニ」をアップルのiPhoneに搭載するための協議を進めていると報じられた。
AI技術の進化と企業間の提携が、スマートフォン市場に新たな地殻変動をもたらす可能性がある。

技術競争から戦略的提携へ　グーグルとアップルが描く生成AI時代のスマートフォン

長年にわたり競争関係にあったグーグルとアップルだが、生成AIの急速な進化がその構図を変えつつあるようだ。
ブルームバーグの報道によれば、両社は現在、グーグルの生成AI「ジェミニ」のiPhoneへの搭載について協議中であるという。この動きは、両社がAI領域での技術共有を模索する兆候であると考えられる。

グーグルの「ジェミニ」は、自然言語処理や画像認識に優れた多機能型AIモデルであり、同社が対ChatGPT戦略の中核に据えてきたプロジェクトだ。高度な応答精度とマルチモーダル処理能力により、ジェミニは単なる会話AIを超え、アシスタント機能や検索補助、画像解析など幅広い用途に対応可能とされている。

アップルにとっては、外部AI技術の活用によって自社製Siriの限界を補完し、より高度にパーソナライズされた体験を提供するための足がかりになるだろう。

iPhoneユーザー体験の再構築と市場競争

両社が提携を協議する背景には、AI領域をめぐる競争環境の激化があると考えられる。
マイクロソフトがOpenAIと連携し、Copilotシリーズを拡張する中では、アップルとグーグルが手を組む選択肢を検討するのは自然な流れであろう。

仮にジェミニのiPhone搭載が実現すれば、アップルにとってはAIを軸とした製品価値の再定義が進むことになる。
たとえば、ユーザーの過去の利用履歴や行動パターンを学習し、最適なアプリや機能を事前に提案するような「先読み型」のインターフェースが実現されるかもしれない。また、撮影画像の自動分類や文章の要約機能など、日常の利便性を向上させる機能強化も期待できる。

一方で、グーグルにとってもiOSという巨大市場へのジェミニ導入は、自社AIのプレゼンス拡大に大きく貢献するだろう。
Android端末に限らずiPhoneでもジェミニが使えるようになれば、ユーザーのAI体験の共通化が進み、AIエコシステムの競争優位を築くうえで極めて有利になる可能性が高い。

ただし、AIの深い統合はプライバシー保護やデータ管理において新たな課題も生むだろう。
特に、ユーザーデータを誰が管理・処理するかという点については、アップルの厳格な方針とグーグルのデータドリブン戦略が衝突するリスクが残る。

今後のスマートフォン市場は「性能」よりも「賢さ」が重視される時代に入るかもしれない。AIが内蔵されたスマホは、単なる通信端末ではなく、ユーザーの意図を先回りして支援する「伴走型パートナー」として進化していくのではないだろうか。