ハウス食品、NFTで海外プロモーション 万博デジタルウォレット活用

2025年4月21日、ハウス食品グループは、ブロックチェーン企業ハッシュポートと提携し、「EXPO2025デジタルウォレット」を活用した海外向けプロモーションを開始した。NFT配布やチケット当選通知など、万博参加者の体験をデジタルで強化する日本発の試みが注目を集めている。
デジタル×食のコラボレーションが生む、海外向けブランド戦略の新潮流
今回の施策は、2025年の大阪・関西万博(EXPO2025)に向けた国際プロモーションの一環である。食品大手のハウス食品グループが、Web3領域に精通したハッシュポートと手を組み、同万博の公式サービス「EXPO2025デジタルウォレット」を活用することで、リアルとデジタルを融合させた体験型マーケティングを展開している。
プロモーションの目玉となるのが、やなせたかし氏がデザインしたオリジナルNFTの配布だ。これはデジタルウォレットを通じて提供される仕組みで、万博に関心を寄せる海外ユーザーに対し、日本のポップカルチャーや食文化を絡めた訴求を行う狙いがある。また、デジタルウォレットを利用することで、万博入場チケットの当選通知もリアルタイムで送信され、利便性と話題性の両面で訴求力が高まっている。
従来の広告手法では届きにくかった層に対し、Web3を介してダイレクトに接点を創出できる点は、海外展開を模索する日本企業にとっても大きなヒントとなる。今回の取り組みは、単なるPRを超えたブランド価値の拡張を目指す事例といえる。
※デジタルウォレットとは:
デジタルウォレットは、仮想通貨やNFTなどのデジタル資産を管理する電子的な財布。ユーザーはスマートフォンなどで簡単にアクセスでき、送受信や保管、決済が可能となる。
万博を超える活用の可能性、NFT×グローバル戦略が導く食とテックの融合
今回のプロモーションは、万博開催に向けた一過性の施策ではなく、今後のブランド戦略を見据えた長期的な布石と見るべきだ。ハウス食品はこれまで国内市場に強い基盤を築いてきたが、今後の成長を見据えるうえでグローバル市場への訴求は不可避である。
Web3技術を活用することで、言語や地域を問わずファンとの接点を生み出すことが可能となる。特にNFTは所有体験そのものがプロモーションになり得るため、単なるプレゼントではなく、企業メッセージを込めた「デジタル記念品」としての意味合いを帯びている。やなせ氏のデザインという文化的資産を活かした点も、海外ファンに対する強い訴求力となるだろう。
一方で、NFTやウォレットの操作に不慣れな層へのサポート体制や、配布対象の選定といった課題も存在する。今後の展開では、ユーザー体験の設計と技術的ハードルの低減が鍵を握る。
ハウス食品のこの挑戦が成功すれば、食品業界のみならず、日本企業全体のプロモーションの在り方にも変革を促す可能性がある。EXPO2025はその実証の舞台として、世界の注目を集めるに違いない。
※NFTとは:
NFT(Non-Fungible Token)は、ブロックチェーン上で発行される唯一無二のデジタル資産。所有者の証明が可能で、デジタルアートや音楽、イベントチケットなどに活用されている。