【Week : 3/24-3/28】AIプラットフォーマーが91億の大型調達 スタートアップ資金調達リサーチ

3月も終盤に入り、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しました。
この記事では、3月24日から3月28日の間にリリースされた、スタートアップの資金調達ニュースをまとめています。 さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
製造業AIデータプラットフォームCADDiを提供するキャディ、91億円の資金調達を実施
事業内容: 製造業AIデータプラットフォーム「CADDi」の提供
調達金額: 91億円
引受先: Atomico、SMBC-GB グロース1号投資事業有限責任組合、Minerva Growth Partners、みずほ銀行、北國銀行、日本政策金融公庫、他1行
今後の展望: プロダクト開発の強化(製造業AIデータプラットフォームの機能拡充、AI技術の開発)、グローバル含めた事業展開の加速
キャディは、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに掲げ、製造業AIデータプラットフォーム「CADDi」を提供するスタートアップです。CADDiは、ファイルサーバーや紙ファイル、ERPなどにバラバラに散らばったデータを集約・解析し、生産活動と意思決定を支援するプロダクト。独自のテクノロジーと専門知識で、点在する経験とデータを構造化し、資産に変えることで、製造業のDXを推進します。また、構造化したデータを活用するためのクラウドサービスである「CADDi Drawer」も提供しており、データ活用を事業に活かすための支援を多角的に提供しています。
同社は日本国内のみならず、ベトナム、タイ、アメリカを含むグローバル4カ国で事業を展開し、グローバル市場において成長を続けています。今回の資金調達は2024年7月の事業統合発表以降初の資金調達となり、2030年までにARR1000億円規模のグローバルプラットフォームになることを目指したものです。リード投資家である欧州ファンドのAtomicoからは、「成長率において世界のソフトウェア分野での最高のベンチマークと比較しても、上位10%に位置している」と非常に高く評価されており、今後の成長が見込まれています。

ドライバー向けマッチングサービスを提供するドライバーテクノロジーズ、5.5億円の資金調達を実施
事業内容: AIとDXを活用した保有車両の稼働率向上のためのマッチングソリューション提供
調達金額: 5.5億円
引受先: ごうぎん Skyland Next 1号投資事業有限責任組合、KCAPベンチャー1号投資事業有限責任組合、ブーストキャピタル1号投資事業有限責任組合、イーストベンチャーズ5号投資事業有限責任組合
今後の展望: 組織体制のさらなる強化、東証グロース市場への株式上場を目指す
ドライバーテクノロジーズは、2022年1月より全国の物流・輸送事業者向けに、AIとDXを活用した保有車両の稼働率向上のためのマッチングソリューションを提供しています。同社いわく、2025年3月時点で導入事業所数、登録ドライバー数、マッチングアドバイザー数において、ドライバー特化のマッチングプラットフォームサービスとして日本最大級の規模を達成したとのことで、プラットフォーマーとして着実な成長を遂げています。
2023年頃まではドライバー業界での利用が中心でしたが、インフラ、建設、製造等の新たな業界での展開を進行しており、ドライバー特化のマッチングプラットフォームサービスから、ノンデスクワーカーのマッチングプラットフォームサービスへと進化を遂げています。また、2023年に実施した1億円超の第三者割当増資を通じて、AIを活用したアルゴリズムモジュールの開発実装を行うことで、マッチングオペレーションの効率化や導入企業へのDX支援プロダクトの拡充等の業務効率化が完了し、さらなる成長への基盤を整えています。

歯科業務DXを支援するエミウム、約6億円の資金調達を実施
事業内容: 歯科技工業務の効率化やDX化を支援するソリューションの開発・提供
調達金額: 約6億円
引受先: Beyond Next Ventures、三菱UFJキャピタル、あおぞら企業投資、DNX Ventures
今後の展望: AIを搭載したクラウドソフトの改良、FinTechを組み込んだ基幹機能の刷新、調達支援サービス、HRテックとの融合
エミウムは、「歯科医療・歯科技工の原動力を生み出すインフラをつくる。」という企業ビジョンを掲げ、2020年の創業以来、歯科医療・技工技術、デジタル製造技術、AI技術を融合した事業の開発とサービスの提供をしています。東京科学大学発のベンチャー企業として、旧・東京医科歯科大学のノウハウを持ち、歯科医療に関する深い知見を持っていることが強みです。
近年は被せ物や入れ歯などの加工物を作る歯科技工士の不足が顕著であり、エミウムはDX化によって効率化に貢献することで、負担を軽減していく方針です。そのために、歯科技工基幹業務クラウドソフト「エミウムクラウド技工」の提供を通じて、将来の歯科医のワークフローに合った技工業務を支援しています。エミウム クラウド技工は、電子技工指示書機能だけでなく、紙の指示書に沿った受注処理、ラボ間取引、歯科技工所と歯科医院間でのチャット機能など、歯科技工の基幹業務をオールインワンでカバーする支援ソフトです。今後はクラウドソフトにAIやFintech機能を搭載することで、さらなる効率化を目指しています。

3Dプリント義足ソリューション事業を展開するインスタリム、約11億円の資金調達を実施
事業内容: 3Dプリント義足および製造装置の開発・製造・販売
調達金額: 約11億円
引受先: JICベンチャー・グロース・インベストメンツ、みずほキャピタル、東大IPC、IT-Farm、未来創造キャピタル、信金キャピタル、リブライトパートナーズ、達盈管理顧問股份有限公司(Darwin Venture Management)、京セラおよびグローバル・ブレインが共同で設立したCVCファンド
今後の展望: 2025年度にウクライナ・インドネシア・ナイジェリアの多国同時展開を実施し、5年以内に全グローバル・サウスエリアの網羅を目指す
インスタリムは、3Dプリントによる義足制作事業を展開するディープテック・スタートアップです。インスタリム曰く、3Dプリンターを使った義足制作に成功したのは同社が「世界で初めて」であり、この分野においてはグローバルな技術的優位性を保有しています。プロダクトとしての「3Dプリント義足」は、従来品と同程度の品質を保ちながら価格を1/10以下に圧縮することができ、「3D義足製造ソリューション」としては、納期・イニシャルコストを1/10以下に圧縮しながら、義肢装具士1人あたりの製造キャパシティを10倍以上に増やすことができます。
現在、インスタリムは日本を本社およびR&Dの機能とし、クリニック事業(義足直販)をフィリピンの2箇所のクリニックとインドの5箇所のクリニックで展開しています。フィリピンでは2022年11月に単月黒字化した後も年次成長率120%程度で伸び続けており、インドにおいては創業から30ヶ月で月次成長率122.8%のペースで成長しています。また、ライセンス事業として自社の3D義足製造ソリューションを各国の義足・義肢装具製作所に提供しており、すでにフィリピン整形外科センター、インド義足製造公社、世界最大級の義足提供NGOであるジャイプールフット、ウクライナのガリチナ・リハビリテーション・センターなどへの導入実績があります。

縦型ショートドラマプラットフォームを展開するテラーノベル、10億円の資金調達を実施
事業内容: 小説プラットフォーム「テラーノベル」および縦型ショートドラマプラットフォーム「テラードラマ」の運営
調達金額: 10億円
引受先: Makers Fund
今後の展望: 小説のコミカライズに加え映像化を強化、開発・制作人材の採用およびコンテンツ制作、プラットフォーム運用
テラーノベルは、「日本の創作文化を産業に」をパーパスに掲げ、メディアミックスを推進しているエンタメIPカンパニーです。小説プラットフォーム「テラーノベル」を起点としたマンガ出版を皮切りに、2025年3月新たに縦型ショートドラマプラットフォーム「テラードラマ」をローンチし、テラーノベルに投稿された1,000万以上の豊富な原作IPの中から、特に人気の作品を原作とするオリジナルドラマを制作しています。
小説プラットフォーム「テラーノベル」は成長を遂げており、登録作家数は90万人以上、作品数は1,000万以上、テラーノベル内の読書回数は25億を超えています。また、コミカライズ作品は制作中のタイトルも含めると100を超えており、『10年越しの復讐』、『異常心理犯 VS 未来視探偵』などの作品が大きな人気を博しています。「テラードラマ」ではスマートフォンで縦画面で楽しめるショートドラマ作品を提供しており、オリジナル作品として3タイトル『10年越しの復讐』『マウントリベンジ』『カリスマ美容師は私を離さない』をリリースしています。今後も「テラーノベル」で活躍するクリエイターの作品や人気作品を中心に、縦型ショートドラマを積極的に制作していく予定です。

まとめ
3月24日から3月28日の資金調達例をまとめました。
今週の資金調達ニュースでは、製造業DXやヘルスケアテック、コンテンツ産業など多様な分野のスタートアップが大型の資金調達に成功しています。特にキャディの製造業AIデータプラットフォームや、インスタリムの3Dプリント義足ソリューションのように、既存産業に革新的なテクノロジーを導入することで大幅なコスト削減と効率化を実現するビジネスモデルが投資家から高い評価を得ています。これらの企業は日本国内だけでなく、早い段階からグローバル展開を視野に入れているのも特徴的です。
また、ドライバーテクノロジーズのノンデスクワーカー向けマッチングプラットフォームやエミウムの歯科技工DXソリューションのように、人手不足や業務効率化といった日本社会の課題に直接アプローチするスタートアップも順調に資金を調達しています。テラーノベルの縦型ショートドラマプラットフォームは、すでに確立した小説プラットフォームの豊富なIPを活用した新たなメディア展開と言えるでしょう。こうした事例からは、単一の技術やサービスだけでなく、既存事業を基盤に複数の収益源を構築するという成長戦略がより重要視されている傾向が見て取れます。
「Plus Web3」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。