AI関連の企業で相次ぐ資金調達 スタートアップ資金調達リサーチ【Week : 3/10-3/14】

3月も中盤に入り、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しました。
今週は、特にAI関連事業での資金調達例が目立ちました。そこでこの記事では、3月10日から3月14日の間にリリースされた、AI関連事業のスタートアップの資金調達ニュースをまとめています。 さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
大手企業の導入続々「AI面接官」開発のVARIETAS、6億円の資金調達を実施
事業内容: 対話型AI面接「AI面接官」の開発・提供
調達金額: 6億円
引受先: ALL STAR SAAS FUND、グローバル・ブレイン
今後の展望: AI面接官の機能強化・導入企業の拡大、業界標準化に向けた進化
VARIETASは、採用候補者と採用担当者の双方が持つポテンシャルを最大限に引き出すサービス「AI面接官」を提供するスタートアップです。「AI面接官」は、ESの読み込みから一次面接までをAIが担当し、経済産業省が定める社会人基礎力を構成する能力要素を多角的に評価します。候補者の回答に応じて深掘り質問を行い、単なるスコアリングではなく、潜在能力や適性を多角的に測定。特許も取得しているサービスで、対話型の設計により、候補者の納得感も向上し、受検者満足度が高い点が強みです。
VARIETASの「AI面接官」は、検証段階に留まらず、キリンホールディングス、ローソン、三菱ケミカル、出光興産、横浜銀行などの大手企業を中心にすでに本格導入が進んでおり、実践的な利用が広がっています。VARIETASはAI面接を、書類選考では判断しきれない候補者の能力を適正に評価する採用手法として捉えており、候補者全員に平等な機会を提供し、データに基づいた透明性の高い採用を実現するとしています。

AI SaaS事業を運営するGROWTH VERSE、4.9億円の資金調達を実施
事業内容: マーケティングAI SaaS「AIMSTAR」、人流分析AI SaaS「ミセシル」、売上管理AI SaaS「Zero」の開発・提供
調達金額: 4.9億円
引受先: BIPROGY、静岡キャピタル9号投資事業有限責任組合、ディーエムエス、ごうぎんご縁結び1号投資事業有限責任組合、丹羽トラスト、鈴与、個人投資家
今後の展望: AI SaaS開発の強化、M&A・アライアンスの加速による事業拡大
GROWTH VERSEは、データとAIの掛け合わせで企業の成長力を増進するAI SaaSを提供するスタートアップです。主力プロダクトであるマーケティングAI SaaS「AIMSTAR」は、オンラインB2C企業の顧客データを分析・活用し、エンゲージメント強化を実現ずるプロダクトで、大手通販、金融などを中心に採用されており、伴走支援体制も高く評価されています。三菱地所、ソフマップ、東海東京証券などの大手企業をはじめ、多くのBtoC事業者に対しての導入実績を有しています。
「AIMSTAR」以外にも、2024年5月に人流分析AI SaaS「ミセシル」、2024年11月に売上管理AI SaaS「Zero」を事業譲受し、従来のオンラインB2C企業に加えオフラインB2C企業にもサービス提供を拡大しています。GROWTH VERSEは、自社で0からサービス開発・営業をするだけでなく、M&Aや事業会社・金融機関とのアライアンスを駆使することで事業進化・顧客基盤の拡大を目指しており、未上場時からM&Aを行うことで非連続的な成長を実現しています。

産業用AIロボットで工場の労働力不足問題に挑むCoLab、3億円の資金調達を実施
事業内容: 自律制御ロボット製品「AI Servo Robot System」の研究開発・製造販売
調達金額: 3億円
引受先: Coral Capital
今後の展望: 産業用AIロボットの研究開発加速、開発および人材採用に充当、組織基盤の強化
CoLabは、世の中の単純作業を自動化するために、独自の自律制御ロボット製品「AI Servo Robot System」の研究開発・製造販売を行うスタートアップです。創業以来、過酷な作業をAIとロボットを使って自動化し、工場の働き方の改善を通じた製造業の変革を目指してきました。昨年、組み立て工程を自動化するAIロボットシステム「AI Servo Robot System」をリリースし、本年は自動車メーカーや電気機器メーカーによる実用化が本格化する予定です。
CoLabのコア技術は、視覚(画像認識)、触覚(センサ)、ロボット、そしてAI技術を組み合わせた、「AIビジュアルサーボ」と「AIセンシングサーボ」です。キーエンスの技術者や研大学研究室出身のエンジニアチームが、センサー関連で独自のノウハウを築いています。今後、研究開発から直販営業まで一気通貫でAIロボットシステムを顧客へ提供していく方針です。

組織に進化をもたらす話術AI開発のUmee Technologies、3億円の資金調達を実施
事業内容: 話術AI「Front Agent®」の開発・提供、コミュニケーションから人の心理モデル・嗜好性を構築する「Deep Insight Engine™」の研究開発
調達金額: 3億円
引受先: グリーベンチャーズ、みずほキャピタル、静岡キャピタル、サイボウズ、M-SOLUTIONS、トヨクモ、タスキホールディングス、QXLV(クオンタムリープベンチャーズ)
今後の展望: AI機能強化などプロダクト体制強化のためのメンバー採用、ビジネスチーム構築のための採用計画の実行、拠点の拡大
Umee Technologiesは、トップパフォーマーの話術を無意識に体得・実践できる話術AI、「Front Agent」の開発・提供を行うスタートアップです。「Front Agent」は対面、WEB会議、電話、あらゆる商談をリアルタイムで解析するAIサービスで、リアルタイムに会話を具体的にレコメンドするAI技術や、話者心理分析や会話文脈を可視化する自社開発のDeep Insight Engineを活用しています。AIが商談の成功例を解析し、営業現場だけでなくマネジメントの支援を行うとともに、商談の会話をkintoneや、SalesforceなどCRMへAIが自動入力し、報告作業をゼロにする機能も備えています。
2023年5月にリリースした「Front Agent」は、口コミを中心に導入社数が150社を超える著しい成長を遂げており、導入した企業では、営業未経験の新人が1ヶ月でベテランの売り上げの2倍を記録したり、組織として慢性的なKPI未達の状況だったところからKPI達成を実現したなど、従来のサービスのアプローチになかった、人の理解・成長にフォーカスした人の進化を体感する事例が生まれています。

会話AIエージェント開発のエキュメノポリス、2.5億円の資金調達を実施
事業内容: 会話AIエージェントプラットフォーム開発、およびそのアプリケーションの開発
調達金額: 2.5億円
引受先: QB第二号投資事業有限責任組合、静岡キャピタル9号投資事業有限責任組合
今後の展望: LANGX事業の販路拡大、研究開発体制の強化、プラットフォーム事業の開発強化
エキュメノポリスは、会話AI技術・対話診断技術を通じて、教育や仕事の現場に会話AIエージェントを派遣し、社会全体の創造性・生産性向上の実現に貢献するスタートアップです。2022年5月の創業以来、メイン事業である言語学習支援のLANGX(ラングエックス)事業の研究開発ならびに事業開発を進めてきました。大学や自治体教育委員会を通じた中学校・高等学校などを中心にLANGXサービス提供の拡大を進めています。
LANGXは、AIとの自然な英会話体験を提供するアプリケーションです。AIとの自然な英会話ができる点や、AIによる高度な英語力診断ができる点が強みで、早稲田大学・中央大学をはじめ、多くの教育機関で採用されています。

まとめ
3月10日から3月14日のAI関連事業での資金調達例をまとめました。
今週の資金調達例からは、AIが多様な産業分野で重要な役割を果たし始めていることが明確に伺えます。採用(VARIETAS)、マーケティング(GROWTH VERSE)、製造(CoLab)、営業(Umee Technologies)、教育(エキュメノポリス)といった幅広い領域で、AIを活用したサービスが生まれ、資金を集めています。これらのスタートアップは、単にAI技術を開発するだけでなく、実際の業務課題を解決し、具体的な成果を上げている点が評価されていると言えるでしょう。
また、各社のビジネスモデルを見ると、SaaS(Software as a Service)型のサブスクリプションモデルを採用し、継続的な収益を確保しつつ、顧客データを活用した製品の改善と拡張を目指す方向性が共通しています。今後も少子高齢化による労働力不足の解消や、業務効率化、意思決定の高度化といった社会課題を解決するAI関連スタートアップへの投資は活発に続くと予想されます。
「Plus Web3」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。