蓄電池のスタートアップが50億超えの大型調達!スタートアップ資金調達リサーチ【Week : 3/3-3/7】

3月に入り、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しました。
この記事では、3月4日から3月8日の間にリリースされたスタートアップの資金調達ニュースをまとめています。
さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。
様々な形状の蓄電池を提供するパワーエックス、56億円の資金調達を実施
事業内容: 大型定置用蓄電池の製造・販売
調達金額: 56.3億円
引受先: 伊藤忠商事、三菱UFJ銀行、今治造船、Frontive Holding、豊田通商、その他金融機関および個人投資家
今後の展望: 大型定置用蓄電池の製造能力拡大、研究開発機能の強化
パワーエックスは、大型定置用蓄電池を製造・販売するスタートアップです。日本政府が決定したエネルギー基本計画では、再生可能エネルギーの主力電源化が掲げられており、その実現には電力系統の安定化を図るため、蓄電池などによる調整力の拡大が不可欠とされています。パワーエックスは、大型定置用蓄電池をはじめとする製品・サービスの国内サプライチェーン拡大を通じて、日本のカーボンニュートラル化に貢献しています。
パワーエックスの「Mega Power」をはじめとする蓄電システムの導入・採用実績は、2024年末時点で累計1GWhを超えています。今回の調達資金は、拡大する顧客需要に応えるため、稼働中の提携工場を2025年下半期を目処に増床する計画や、岡山県玉野市の自社工場における第2製造棟の建設検討など、大型定置用蓄電池の製造能力の段階的拡大に活用されます。また、Made in Japanの高い信頼性とグローバル市場での競争力を兼ね備えた次世代蓄電池製品および高度な電池制御技術の開発を目指し、新たな研究開発体制の発足も計画しています。

新卒採用支援サービスを提供するABABA、12.5億円の資金調達を実施
事業内容: 新卒採用支援サービス「ABABA」および就活版全国共通模試「REALME」の運営
調達金額: 12.5億円
引受先: DBJキャピタル、JPインベストメント、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、デライト・ベンチャーズ、ちゅうぎんキャピタルパートナーズ、広島ベンチャーキャピタル
今後の展望: 就活生向けサービスの機能開発、26年春卒業予定の学生の獲得と支援
ABABAは、新卒採用領域に特化したサービスを提供するスタートアップです。主力事業としてダイレクトリクルーティングサービス「ABABA」を展開しており、最終面接で採用できなかった就活生に対して「お祈りエール」を送り、ABABAへの登録を促すことで、他企業からのスカウトを受けられるようにするサービスを提供しています。これにより「就職活動うつ」に悩む就活生の心理的ストレスの軽減に寄与しながら、採用企業のブランディングにも貢献しています。「ABABA」は、25年春卒業予定の学生の利用者数が約4万人に達し、前年同期比で3倍近くとなりました。また、利用企業も累計で2,000社を突破し、前年度末までの累計の2倍近い水準に達しています。
また、2024年11月には新サービスとなる、就活版全国共通模試「REALME」を正式リリース。このサービスは、AI面接を通して自己分析から面接練習まで就活対策を一気に進めることができるもので、約20分のAI面接を受験することで、新卒採用において重要視される35の項目と14の能力が点数化されます。今回調達した資金は、これから就職活動が本格化する26年春卒業予定の学生の獲得と支援に注力し、各部門の施策を展開していくほか、既存事業の機能開発を進めていく方針です。

『空飛ぶクルマ』プラットフォーム開発のAirX、12.5億円の資金調達を実施
事業内容: 「空飛ぶクルマ」プラットフォームの開発、エアモビリティを活用した空の旅客サービス
調達金額: 12.5億円
引受先: ブルーインキュベーション、anri、三和工業、ダイビル、ニッセイ・キャピタル、NEXCO、ヒト・コミュニケーションズ、西武グループ、ペガサステック、マイクロアドベンチャーズ、Macbee eight
今後の展望: 空の移動体験の普及拡大、ポート整備、機体の整備・格納に関する大規模投資
AirXは、「人の可能性を解放する」というミッションのもと、移動の制約をなくし、時間の使い方を変えることで、人生の可能性を最大限に広げる社会の実現を目指しているスタートアップです。現在、「空飛ぶクルマ」の就航を見据え、国内で安全にサービスを提供できる体制を構築しています。また、ヘリコプターやビジネスジェットなどのエアモビリティを活用した予約プラットフォーム「AIROS Skyview」を通じて、移動や遊覧などの空の旅客サービスを提供。サービスは関東・関西を中心に全国11ポートへと展開し、累計25,000組以上の顧客に利用されています。
「空飛ぶクルマ=eVTOL(電動で動き、垂直に離着陸が可能な機体)」に関する取り組みとして、2018年から「空の移動革命に向けた官民協議会」に参画し、機体メーカーであるEHang社やEVE社と連携。2023年には無操縦者航空機の離島間飛行に国内で初めて成功しました。現在、全国17の自治体と連携しており、2027年にエアシェアリングサービスの運航を開始する予定です。AirXは、エアモビリティの旅客サービスに必要な要素を1つのプラットフォームに垂直統合しており、これによりコストを抑え、顧客に「リーズナブルな価格」と「簡単に利用できる利便性」を提供しています。

不動産テックベンチャーのLive Search、資金調達を実施
事業内容: 不動産仲介店舗の集客支援、不動産ポータルサイト「ムームー不動産」の運営
調達金額: 非公開(累計調達金額は8億円)
引受先: 日本政策金融公庫、佐賀銀行、日本成長投資アライアンス、SBI地銀ホールディングス
今後の展望: セールス職を中心とした人材採用、サービス展開エリアの拡大、プロダクトの強化
Live Searchは、「不動産情報をカタログ化する」というミッションのもと、不動産管理会社向け物件撮影BPaaSサービス「Req」と物件写真データプラットフォーム「Stockplace」を運営する不動産テックベンチャーです。「Req」はプロカメラマンへの撮影・間取り図作成をシステムを通して依頼できる不動産特化のサービスで、2025年1月時点で5万件超の物件撮影と、累計導入社数で業界No.1を達成しています。「Stockplace」はプロカメラマンが撮影した高品質な空室写真を不動産仲介業者が簡単にダウンロードして利用できるプラットフォームで、物件データダウンロード(販売)数は30,000件を突破しています。
同社は「物件データオープンプラットフォーム化構想」を掲げており、不動産業界における高齢化・労働人口の減少・採用難といった課題や、空室率の急上昇(2033年までに30%台へ)という課題に対応するため、物件内に眠るユニークデータを最大限に活用し、物件データの流通とオープン化を促進するインフラ構築を目指しています。今回の資金調達により、同社はこの構想実現のためにセールス職を中心とした人材採用、サービス展開エリアの拡大、プロダクトの強化に取り組んでいく方針です。

AgeWellJapanが累計2.5億円の資金調達を実施
事業内容: シニア世代向け孫世代の相棒サービス「もっとメイト」、多世代コミュニティスペース「モットバ!」の運営
調達金額: 1.3億円
引受先: Central Japan Seed Fund、ポーラ・オルビスホールディングス、いよぎんキャピタル、広島ベンチャーキャピタル、ユナイテッド、ほか個人投資家
今後の展望: Age-Wellな社会を実現する事業共創の推進、人材採用の強化
AgeWellJapanは、「挑戦と発見を通じてポジティブに歳を重ねる」Age-Wellな社会の創造を掲げ、医療・介護でもない新たなシニア市場を広げるために事業を展開しているスタートアップです。同社は主に、シニア世代のウェルビーイングを実現する孫世代の相棒サービス「もっとメイト」と、多世代が集う交流拠点となるコミュニティスペース「モットバ!」を運営しています。「もっとメイト」では、20〜30代のスタッフがシニア世代に対して、スマートフォンやパソコンの個別レクチャーや、散歩、お出かけ、趣味のお供など多岐にわたるサポートを提供しています。
また、AgeWellJapanは「Age-Well Design Lab」を通じて、シニアの本音に向き合う人材の育成や、シニア・事業者を巻き込んだ事業共創など様々な取り組みを行っています。今回の資金調達により、Age-Wellな価値観を持つ企業と新たな商品やサービスを創出し、地域社会に貢献する持続可能なまちづくりを推進するとともに、事業を共に推進するメンバーの採用強化を図ります。具体的には、シニアと社会をつなぐ新たな仕組みづくりや、年齢を理由に諦めない社会のモデル創出、多世代が交わる場の拡大など、「100歳まで生きたい社会」の実現を目指しています。

まとめ
3月3日から3月7日の資金調達例をまとめました。
今週は、エネルギー、人材、モビリティ、不動産、シニア支援と多様な分野でのスタートアップが資金調達に成功しています。特に、パワーエックスが56.3億円という大型の調達を実現したことは、再生可能エネルギーの普及に伴う蓄電池需要の高まりを反映しています。また、ABABAやAirXがそれぞれ12.5億円を調達するなど、社会課題を解決する革新的なビジネスモデルに投資家の期待が集まっていることがわかります。
AgeWellJapanのような超高齢社会における新たな価値創造を目指す企業への投資も増えており、日本特有の社会課題解決型のスタートアップが成長しています。これらの企業に共通するのは、単なるテクノロジー開発だけでなく、社会システムの変革やプラットフォーム構築を通じて新たな市場を開拓していく姿勢であり、今後もこうした領域での資金調達が活発化すると予想されます。
「Plus Web3」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。