2026年10月20日、国内のNTTドコモとNTTは、無線基地局の通信処理負荷の移動と、太陽光発電・蓄電池の制御をAIで協調させる世界初の実証実験を開始した。再生可能エネルギーの利用拡大や電力需給の安定化に加え、停電時の通信サービス継続時間の延伸を目指す。
AIが通信負荷と蓄電池を協調制御 基地局の電力利用を最適化
今回の実証の特徴は、通信設備と電力設備を個別に制御する従来の運用から脱却し、両者を一体的に最適化する点にある。生成AIの普及などでデジタル化が進み、通信ネットワークの消費電力が増加する一方、脱炭素化に向けた再生可能エネルギーの導入や、災害に備えた通信インフラの強靭化も求められている。
従来の基地局では、通信設備と電力設備がそれぞれの運用条件に基づいて独立して制御されていた。そのため、太陽光発電の状況に合わせて通信処理を柔軟に切り替えたり、停電時に限られた電力を通信設備の運用と連携させたりすることが難しかった。
この課題に対し、両社は通信処理負荷を基地局間で移動させるワークロードシフト(WLS)(※)と、太陽光発電や蓄電池を管理するエネルギーマネジメントシステム(EMS)基盤を組み合わせる。AIが算出した運用計画に基づき、NTTが各基地局の通信負荷を制御し、ドコモが蓄電池を制御する仕組みだ。
検証環境では、NTTがオープンソースソフトウェア(OSS)を用いて仮想無線アクセスネットワーク(vRAN)の通信処理を模擬し、ドコモの基地局と接続する。
分散電源の稼働状況を踏まえて通信処理の移動先を調整し、平常時、電力需給ひっ迫時、停電時の3つの場面で有効性を検証する計画である。
※ワークロードシフト(WLS):通信処理などの計算負荷を別の拠点へ移動させる技術。電力状況に応じて処理先を切り替えることで、特定拠点の消費電力を抑制できる。
再エネ活用と災害対策を両立 実用化には制御性能の検証が鍵
本技術が実用化されれば、基地局の電力利用を通信需要だけでなく、再生可能エネルギーの発電状況や電力需給に応じて最適化できる可能性がある。
例えば、太陽光発電の電力を利用しやすい拠点へ通信処理を移すことで、再生可能エネルギーの利用率向上が期待される。発電量と通信処理の配置を連動させることは、通信インフラの脱炭素化を進めるうえでも重要なアプローチとなる。
電力需給がひっ迫した際には、蓄電池の活用に加え、通信処理を別の基地局へ移動させることで、対象拠点の消費電力を抑える。これは、通信事業者が自社設備の省電力化を図るだけでなく、デマンドレスポンス(DR)(※)を通じて電力網の安定化に貢献する取り組みでもある。通信インフラの運用を電力システムと連携させることで、電力需要の調整に新たな選択肢をもたらすと考えられる。
さらに、停電時には通信処理を他拠点へ移すことで、停電した基地局の消費電力を削減し、蓄電池によるバックアップ時間を延ばす効果が見込まれる。災害時にも通信サービスを維持しやすくなれば、社会インフラとしての通信ネットワークの強靭化につながるだろう。
ただし、これらは現時点で実証による効果を検証している段階であり、具体的な省電力量や通信継続時間の延伸幅は示されていない。通信処理の移動による他拠点への負荷集中や、電力状況の変化に応じた制御の適切性なども、実用化に向けて確認すべき課題となる。
両社は2026年12月末までに実証を完了し、技術の有効性を評価する予定だ。将来的にはデータセンターとの連携や、対象とするエネルギーリソースの拡張も検討する。6GやIOWN時代を見据え、通信と電力を横断して最適化する技術が、持続可能で災害に強い社会基盤の構築にどこまで貢献できるかが焦点となる。
※デマンドレスポンス(DR):電力需給の状況に応じて、需要家側の電力消費を調整する仕組み。需要の抑制や時間帯の変更などを通じ、電力需給の安定化を目指す。