2026年7月10日、奈良文化財研究所と大日本印刷(DNP)は、文化財保護のDXを推進する「次世代型遺跡博物館」の実現に向けた連携研究協定を締結した。研究成果をAIが活用しやすいデータへ変換し、対話型AIガイドによって遺跡への理解を深める新たな文化体験の創出を目指す。
AI活用で遺跡の案内を大きく刷新
奈良文化財研究所とDNPは、奈良文化財研究所が長年蓄積してきた発掘調査や研究成果と、DNPが持つデジタルアーカイブやAI技術を組み合わせ、「次世代型遺跡博物館」の研究開発を開始する。
今回の取り組みでは、紙の調査記録や報告書、画像などの膨大な資料をAIが理解・活用しやすいデータへ変換する。これにより、従来は分散していた研究成果を一元化し、利用者が必要な情報へ容易にアクセスできる環境を整備する。
さらに、利用者の知識や興味に応じて解説内容を変える対話型AIガイドを開発する計画だ。現地ではスマートフォンやタブレットを通じて自由に質問できるほか、ARによる遺構の復元表示も組み合わせ、研究者と対話するような体験を提供することを目指す。
実証実験は2026年度内に平城宮跡で開始し、世界遺産「古都奈良の文化財」が登録30周年を迎える2028年のサービス開始を予定している。その後は全国の遺跡や史跡への展開も視野に入れ、自治体などが導入しやすい標準モデルとして確立する方針である。
文化財DXの可能性と普及への課題
今回の取り組みは、文化財を「保存する」だけでなく、「理解し活用する」段階へ進める試みと言える。遺跡は現地を訪れても当時の姿を想像しにくいケースが多いが、AIによる対話やARを組み合わせることで、歴史的背景まで含めて学べる環境が整えば、教育や観光の価値向上につながる可能性がある。
また、研究者が蓄積してきた知見をデジタル資産として活用しやすくなることで、自治体や博物館における情報発信の効率化も期待される。将来的には全国の文化財へ横展開されれば、地域活性化やインバウンド需要の拡大を後押しする効果も見込まれるだろう。
一方で、AIの解説内容については、学術的な正確性を確保することが重要になると考えられる。新たな発掘成果によって歴史解釈が更新される可能性もあるため、専門家による継続的な監修やデータ更新の体制を維持できるかは、全国展開や長期運用を進める上で重要な要素の一つになると考えられる。
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