2026年7月8日、ネットワンシステムズ株式会社はシスコシステムズ合同会社との協業をAIインフラ事業へ本格拡大すると発表した。両社はエンタープライズ向けAIインフラの国内実装を全フェーズで一気通貫支援する。
国内中核実装パートナーとして「Secure AI Factory」を展開
ネットワンシステムズは、CiscoとNVIDIAが戦略的に共同設計したエンタープライズ向けAIインフラのリファレンスアーキテクチャ「Cisco Secure AI Factory with NVIDIA」の国内中核実装パートナーに就任した。
これにより、設計や構築、さらには運用の全フェーズを一気通貫で支援する体制が構築される。急速に高まる国内のAIインフラ需要に対して、確かな技術力で応える狙いだ。
協業の背景には、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の業務活用が加速する中で、今後はエージェント型AIやフィジカルAIの導入本格化が予測されている状況がある。
しかし現状では、セキュリティやスケーラブルな拡張性、運用体制の課題が壁となり、概念実証(PoC)から本番移行へ踏み切れない企業が後を絶たない。
この課題を打破するため、両社はリファレンスアーキテクチャの共同展開を開始する。Ciscoの事前検証済みデザインおよびNVIDIAの基盤に準拠し、日本市場におけるセキュアで強固なAI環境の実装を加速させる見通しだ。
さらに、ネットワンシステムズの共創施設「netone valley」には、CiscoとNVIDIAのリソースを融合したAIのショーケース環境を開設した。
AIインフラに加え、エコパートナーによるアプリケーションやフィジカルAIのデモ環境を完備しており、顧客のユースケースを想定した技術ブリーフィングを通じて導入への確信を導くという。
PoCの壁を打破する本番移行支援 投資対効果と検証コストのバランスが鍵
今回の戦略的協業は、日本企業が抱える「AIのPoC止まり」という深刻な課題に対する現実的な解になると期待されている。
本番環境を想定した事前検証により、システム移行時の不確実性や導入リスクを最小化できる点が最大のメリットと言える。
実績のある検証済みアーキテクチャを採用することで、品質保証と意思決定の迅速化が同時に実現する可能性が高い。
設計段階からセキュリティと可観測性が組み込まれているため、運用安定性の確保という面でも企業側のメリットは大きい。シスコの吉井彩乃氏は「日本企業のAI本番稼働を力強く後押しし、信頼性の高いインフラの標準を確立する」と言及しており、ネットワンの藤田雄介氏も「PoC段階で止まっている活用の動きを事業価値へと転換し、市場をリードする」と強い自信をのぞかせる。
一方で、懸念されるのは初期のインフラ投資コストや、高度な技術者を継続的に確保する運用のハードルだ。フルスタックの最新環境は強力である反面、個別のビジネスモデルに見合った明確な投資対効果(ROI)を早期に証明できなければ、中長期的な運用の維持が難しくなるリスクも潜んでいる。
今後は、「netone valley」でのデモンストレーション提供を順次拡充し、業種別AIインフラソリューションの開発まで踏み込む計画だ。この取り組みが日本企業のDXを真の本番稼働へと導く試金石となるだろう。