2026年6月3日、UBEはマクセルとの合弁会社である宇部マクセルを通じ、車載用リチウムイオン電池向けセパレーター原膜製造設備の増設を発表した。EV市場の成長に加え、AIデータセンター向け電力貯蔵需要の拡大も背景にあり、生産能力を現行比約50%引き上げる計画である。
AI時代の電力需要が電池材料市場を押し上げる
宇部マクセルは、大阪府堺市の堺事業所においてセパレーター原膜製造設備の新設を進める。今回の計画は、2026年秋の完工を予定する設備増設に続くもので、2026年度中に第1期工事へ着手し、2029年度には第2期工事も開始する予定だ。
これにより、同社のセパレーター原膜生産能力は現在と比べて約50%増加する見込みとなる。セパレーター(※)はリチウムイオン電池の安全性や性能を左右する重要部材であり、車載電池市場の拡大とともに需要が増え続けている。
足元ではEV市場の成長ペースに調整もみられるが、ハイブリッド車(HV)向け需要は堅調に推移している。一方で近年はAIデータセンターの急増による電力消費拡大が世界的な課題となっており、電力貯蔵システム(ESS)(※)向け電池需要も拡大基調にある。今回の増産投資は、自動車分野だけでなくエネルギーインフラ市場の成長を見据えた動きと言える。
※1 セパレーター:リチウムイオン電池内部で正極と負極を隔てる薄膜。電流の短絡を防ぎながらイオンを通過させる役割を持ち、電池の安全性や性能を左右する重要部材。
※2 ESS(Energy Storage System):電力を蓄えて必要な時に供給する電力貯蔵システム。再生可能エネルギーの出力変動を補う用途や、データセンターのバックアップ電源として活用される。
AIインフラ拡大で非車載市場も成長加速へ
生成AIの普及に伴い、世界各地で大規模データセンター建設が進んでいる。こうした施設では安定した電力供給が不可欠であり、再生可能エネルギーとの組み合わせを前提とした蓄電設備への投資が加速している状況だ。
その結果、リチウムイオン電池市場は従来の自動車用途中心から、電力インフラ向けへと需要源が多様化しつつある。宇部マクセルにとっては、乾式製法による高い安全性と耐久性を武器に、非車載分野への展開を強化する好機になる可能性がある。
もっとも、電池材料業界では中国メーカーを中心とした競争激化も続いている。将来的には価格競争や需給変動の影響を受けるリスクも否定できない。それでもAIと脱炭素化という二つの巨大トレンドが続く限り、電池関連部材への中長期的な需要拡大は続くと考えられ、日本の素材メーカーにとって重要な成長機会となりそうだ。