ホワイトハウスの「ジブリ風」イラスト投稿が引き起こした波紋

2025年3月28日、ホワイトハウスが生成AIを用いて移民の強制送還を称賛する「スタジオジブリ風」のイラストを公開した。この投稿は、移民政策を巡る議論が高まる中で発信されたが、SNS上では「不適切だ」「軽視している」と批判が相次いでいる。
アメリカ国外にまで波紋が広がっており、政策広報の在り方が改めて問われている状況だ。
「スタジオジブリ風」の演出に批判集中、移民政策を巡る広報戦略の失敗か
ホワイトハウスは3月28日、公式SNSを通じて、移民の強制送還をテーマにしたAI生成のイラストを公開した。
注目を集めたのは、そのビジュアルスタイルである。イラストは「スタジオジブリ風」と表現され、移民局職員が、ドミニカ共和国出身の移民に手錠をかける場面を描写している。背景にはアメリカ国旗が掲げられ、職員は厳しい表情で移民を拘束し、移民は涙を流す姿が印象的に描かれていた。
ホワイトハウスは、移民政策における「秩序と公正」の象徴としてこのイラストを活用したと説明するが、その意図は一部の支持層以外には届かなかった。
SNS上では瞬く間に批判が広がった。
「グロテスクだ」「気分が悪くなる」といったコメントが相次ぎ、深刻な社会問題である移民の強制送還をアニメ調で美化する手法に疑問が投げかけられている。
批判の多くは、スタジオジブリという親しみやすく、温かみのあるアニメスタイルが、非人道的なシーンと組み合わされることで、問題の本質を軽視している点に集中していた。
投稿は瞬く間に拡散され、各国メディアでも取り上げられる事態となった。
過去にも物議を醸した移民政策の演出、政府広報今後どう在るべきなのか
今回の問題は、トランプ政権時代から続く移民政策に関する演出手法の延長線上にある。
過去には「ASMR:不法移民の強制送還フライト」と題された動画が政府公式アカウントから配信され、移民送還の音を強調したコンテンツが強い批判を浴びた。
今回も同様に、視覚・聴覚に訴える演出が、かえって移民問題の深刻さや人権問題に無頓着だと受け取られた格好だ。
SNS上での批判が瞬時に広がる現代において、政府の広報戦略が逆効果を生む可能性も高い。移民政策の演出の結果として、政策に対する社会的な反発が強まり、政府の信頼性が損なわれる恐れがある。
現在は、政府が今回の投稿をどう扱うか、削除や説明の強化などの対応が注目される状況にある。問題の本質は、単なる表現手法の是非に留まらず、移民政策そのものに対する社会的な議論を再燃させている。
今後の広報戦略においては、より慎重なアプローチが求められるだろう。視覚的な表現に頼るのではなく、実際の政策やその影響についての透明性を高めることが重要なのではないだろうか。
今後、移民問題に関する社会的な合意形成を図るためには、政府が市民との対話を重視し、信頼を築く努力が不可欠だと考えられる。