Web3における「商業化vsコミュニティ」の対立 Doodles、マクドナルドコラボ直後にCEO交代劇
2025年1月29日、人気NFTプロジェクト「Doodles」が、マクドナルドとの大規模なコラボレーションの直後に、突如としてCEO交代を発表した。
前CEOのJulian Holguin氏が退任し、プロジェクトの共同創設者であるアーティストのScott Martin(Burnt Toast)氏が新CEOに就任する。これは、単なる経営陣の交代というだけでなく、「コミュニティ重視」と「商業化」という二つの価値観の衝突を象徴する出来事である。
Web3プロジェクトが直面している課題の典型例として、業界内外から注目を集めている。
商業化路線からの転換 アーティスト創業者の決断
Doodlesは2021年10月の立ち上げ以来、独特なアートスタイルと強力なコミュニティ基盤により、NFT市場で確固たる地位を築いてきた。
特に、2022年にBillboardの前社長Julian Holguinを招聘して以降は、プロジェクトは急速な商業化路線を辿った。アディダスやマクドナルドとの提携、音楽アーティストPharrell Williamsのチーフブランドオフィサー就任など、大規模な企業コラボレーションを次々と実現し、規模を広げてきたのだ。
しかし、この商業的成功の一方で、プロジェクトの本来の理念が失われていくことへの懸念も高まっていた。新CEOに就任したMartin氏は就任声明で「リスクテイク、破壊的イノベーション、徹底的な透明性、そして私たちを作り上げた本来の真正性への回帰」を掲げ、これまでの「企業的な」アプローチからの明確な転換を主張している。
NFTプロジェクトの岐路 コミュニティvs商業化
今回の「商業主義」と「コミュニティの価値観」の衝突は、Web3業界全体が直面している課題だ。Bored Ape Yacht ClubやCool Catsなど、他の主要NFTプロジェクトも、企業的な成長戦略とコミュニティの価値観の相克という課題に直面している。
Web3業界では、企業経験豊富な「Web2(旧来)の経営者」による急速な事業拡大路線から、プロジェクトの本質的な価値を重視する「Web3ネイティブな創設者」へと経営の舵を切り直す例が増加傾向だ。
NFTプロジェクトの価値は、単にデジタルアートの所有権をもたらす、というものではなく、固く結ばれたコミュニティを形成し、プロジェクトへの帰属意識を生み出すものだ。NFTの保有者は単なるデジタルアートの所有者ではなく、プロジェクトの意思決定に参加できる権利を持つ。Doodlesでは、NFTホルダーがプロジェクトの資金使途を決定するDAO(分散型自治組織)への投票権を持ち、さらに限定商品の優先購入権やイベントへの参加権など、独自の特典を享受できる。このように、保有者がプロジェクトの運営に直接関与し、特別な体験を共有できる仕組みが、強い帰属意識を生み出している。
大規模な商業展開は、時としてコミュニティの価値観との間に緊張関係を生むことがある。Doodlesのフロアプライス(最低取引価格)は、2022年5月の約57,000ドルから2024年1月には13,501ドルまで下落している。
プロジェクトの方向性に対するコミュニティの評価が下がったことで、NFTアートの価値が下がったのだ。マクドナルドとのコラボは商業的には戦略的だが、コミュニティの価値観に沿うものではなかった。それによって、今回の解任がより注目されることとなったのである。
まとめ
DoodlesのCEO交代は、Web3プロジェクトが発展する際に生じる葛藤を如実に示すものだ。商業的成功と、コミュニティ価値の維持という二つの目標の両立は、決して容易ではない。しかし、この挑戦こそが、Web3時代のブランド構築における本質的な課題なのかもしれない。
今後、アーティスト創業者による新体制が、どのようなバランスを見出していくのかが、Web3業界全体の未来を占う重要な指標となるだろう。
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