Bitdeerが米国製造強化、関税政策でビットコインマイニング強化

2025年4月15日、シンガポール拠点のビットコインマイニング企業Bitdeerが、トランプ政権の関税政策の影響を受け、米国における自社マイニングおよび機器製造を強化するとブルームバーグが報じた。
サプライチェーンの混乱を受けた戦略転換であり、ビットコイン市場への影響が注目されている。

米国製造と自社マイニング強化で、サプライチェーンリスクに対応

Bitdeerは今年後半、米国内でビットコインマイニング機器の製造に着手する方針だという。
これまで同社は、他社マイニング企業向けにハードウェアを供給する側面も担ってきたが、今後はその比重を大きく見直し、自社によるマイニング事業に経営資源を集中させる計画だ。
この背景には、トランプ政権による関税政策がある。

中国や東南アジアを原産とする電子機器や部品に対する関税の影響で、マイニング機器の輸入コストが上昇している。
これにより、機器の国際調達に依存する企業は深刻な打撃を受けている。
Bitdeerはこのような不安定な供給網からの脱却を目指し、米国への製造拠点移管を推進している。

同社は、90日間の関税一時停止措置を利用し、マイニング機器を米国に出荷する計画だというが、今後の政策変更を見据え、長期的な生産体制の確立に動いた形だ。
米国での製造は、地元経済への波及効果も見込まれており、雇用創出という副次的な成果も期待されている。
これらの戦略変更により、Bitdeerは自社のビットコイン保有量を増加させ、より安定した収益基盤の構築を狙っていると考えられる。

市場低迷下でも攻勢へ　Bitdeerの長期視点と業界への波及効果

現在、ビットコインのハッシュ価格（※）は過去最低水準にまで低下しており、マイニング事業の収益性は全体的に低下傾向にある。
こうした状況下で、Bitdeerが自社マイニングへの注力を表明したことは、短期的な利益よりも長期的な資産形成に重きを置いた戦略と読み取れる。
マイニング機器の需要が冷え込むなか、同社があえて販売よりも自己採掘を選択した点は、供給者としての立場から保有者としてのポジションへの転換を示唆している。

Bitdeerはすでに米国、ノルウェー、ブータンにデータセンターを展開しており、グローバルなインフラ整備を進めている。
今回の米国内製造の動きも、このグローバル展開の一環と位置づけられ、今後さらに各地域におけるエネルギーコストや規制環境を踏まえた最適化が進められるだろう。

市場全体としては、同様の関税リスクに晒される他マイニング企業にも戦略の見直しが波及する可能性がある。
自社マイニングへの移行、または生産拠点のローカル化が加速すれば、業界全体の構造が大きく変わることも否定できない。
Bitdeerの動きは、その先陣を切るものとして注目される。

※ハッシュ価格：マイニングによって得られる報酬（ビットコイン）を、消費した計算力（ハッシュパワー）で割った値。マイナーの収益性の指標となる。