テンセント、AI領域に100億ドル超投資計画 ゲーム好調で増益

2025年3月19日、中国のIT大手テンセント・ホールディングス(騰訊)が2024年第4四半期の決算を発表し、人工知能(AI)インフラへの投資を拡大する方針を明らかにした。
テンセントの業績好調とAI投資の背景
2024年第4四半期の決算では、売上高が前年同期比11%増の1725億元(約3兆5700億円)、純利益は90%増の513億元(約1兆600億円 )となり、大幅な成長を記録した。
特に、ゲーム事業が好調で、ネクソン制作のゲーム「アラド戦記モバイル」や自社のPCシューティングゲーム「デルタフォース」などのリリースが成功を収め、収益を押し上げた。広告収入も拡大し、企業向けのクラウド事業も堅調に推移している。
この成長を受け、テンセントはAIインフラへの投資を加速する方針を打ち出した。
2025年には売上高の10%から14%をAI関連の設備投資に充てる計画であり、100億ドル(約1兆5000億円)以上の資本支出を見込んでいる。
AI技術の向上は、テンセントの主力事業であるゲーム、広告、クラウドサービスの強化に直結すると考えられる。
また、同社は自社のプラットフォームにAIを統合する戦略を推進している。
例えば、チャットアプリ「微信(ウィーチャット)」では、AIチャットボット「Yuanbao」を導入し、ユーザー体験の向上を図っている。
AIを活用したコンテンツレコメンドや広告配信の最適化も進められており、今後さらなる成長が期待される。
競争環境の激化と市場の動向
AI分野の競争は激化しており、テンセントのライバル企業も積極的な投資を進めている。
特に、アリババは530億ドル(約8兆円)をAIインフラに投じる計画を発表し、市場の注目を集めている。また、バイドゥも生成AIの開発を加速しており、テンセントを含めた中国IT企業間の競争が一層激しくなっている。
市場全体を見ても、AI関連市場の成長は続くと予測されている。
IDCの報告によれば、2027年までにAI市場の規模は1兆ドル(約150兆円)に達する見込みだ。こうした環境の中で、テンセントはAI技術を強化し、競争優位性を確保する必要がある。
投資家の反応も好意的で、決算発表後にテンセントの株価は上昇した。
特に、AI技術の進化による長期的な収益向上が期待されており、投資家の関心が高まっている。
しかし、競争環境の厳しさを考慮すると、テンセント単独での技術開発だけでは不十分であり、外部企業との戦略的提携や買収がカギを握るだろう。例えば、半導体メーカーやAI関連のスタートアップとの協業を強化することで、AIインフラの競争力向上につながる可能性がある。
総じて、テンセントのAIインフラ投資は、短期的なコスト増加という課題を伴いながらも、長期的な競争力強化に向けた重要な戦略であると言える。今後は、市場環境の変化を見極めながら、どの分野にどの程度のリソースを割くかが成長の分岐点となるだろう。