ShopifyのAI「Sidekick」が進化　宣言型コマースの実現へアップデート

Shopifyの日本法人であるShopify Japanは2025年5月7日、AI搭載コマースアシスタント「Sidekick（サイドキック）」において、マルチステップ推論機能の強化、画像生成機能の統合を含む大規模アップデートを実施したことを発表した。AIがビジネスの意図を理解して行動する「宣言型コマース（Declarative Commerce）」の実現に向けた取り組みとして注目される。

宣言型コマースの実現に向け、Sidekickが進化　高度な推論とマルチソース分析が鍵

宣言型コマースとは、事業者が「売上を伸ばしたい」「特定顧客にリーチしたい」といった意図をAIに伝えるだけで、最適な方法が導き出される仕組みだ。
このアプローチにより、従来の手動による分析や判断が不要になり、意思決定のスピードと精度が格段に向上すると期待されている。

今回のアップデートでSidekickは、より高度な推論能力を獲得した。
たとえば売上低下の原因について、在庫データやマーケティングの実施状況を複合的に分析し、根本的な課題と具体的な対応策を導き出す。このように、マルチステップでの問題解決が可能となった。

また、複数の情報源を統合して分析する「マルチソース分析」が実装された。売上、在庫、顧客データといった異なるデータを同時に処理し、インサイトとして提示することで、事業者は包括的な状況把握が可能となる。これにより、戦略の立案や施策の実行が格段に効率化される。

さらに、顧客の精緻なセグメンテーション機能が強化されたほか、対話の履歴や文脈を学習して精度を上げる自己学習型レスポンス機能、そして画像生成機能の統合により、ビジュアルコンテンツの制作もワンクリックで完結できるようになった。

加えて、今回のアップデートでSidekickは新たに20の言語に対応した。事業者は母国語で直感的にAIと対話できるようになり、グローバル展開を目指す企業にとっての参入障壁が大きく下がったといえる。

AIがもたらすビジネスの民主化　Shopifyのビジョンが示す未来

Shopifyのプロダクト担当バイスプレジデントであるヴァネッサ・リー氏は、「AIはコマースの平等化装置となる」と述べている。これは、資金力や人員が限られている事業者であっても、高度な意思決定支援ツールにアクセスできることを意味する。

今後は音声対話やARなどのインターフェースと統合し、Sidekickの応用範囲はさらに拡張される可能性がある。
ECのみならず、リアル店舗の接客補助や業務オペレーション支援にまでAIの役割が及ぶことで、小売業全体の在り方が変化していくことも想定される。

AIによる判断の透明性やエシカルな活用が求められる場面も増えると予測されるが、それでもSidekickのようなAIツールがもたらす恩恵は計り知れない。
AIを使いこなすことが、競争力そのものにつながる時代が始まったといえる。