キャディの調査レポート　製造業AI導入後の業務改善効果

2025年5月19日に公開された国内クラウド企業キャディの調査レポートにより、製造業界におけるAI導入は初期不安を乗り越え、多くの現場で実質的な業務改善効果をもたらしていることが明らかになった。

7割が不安を抱えてのスタート、それでも「業務改善効果を実感」

クラウドサービスを提供するキャディが2025年4月下旬に実施した調査では、製造業に従事する300人を対象にAI導入の実態が明らかにされた。
注目すべきは、導入前に不安を感じていた人が全体の7割以上にのぼった点である。特に「専門知識が必要そう」（27.0%）、「操作が難しそう」（19.7%）、「英語表記が多い」（13.7%）といった声が多く、技術的障壁の高さが懸念材料として浮かび上がった。

それでも約47%が「とりあえず試してみた」と答えており、セミナーや同僚の事例を参考にしながら導入へ踏み切った姿がうかがえる。

使用後の印象についても「思っていたより簡単だったが、慣れが必要」（43.7%）とする回答が最多で、技術的な壁は意外と低かったと感じているユーザーが一定数存在しているようだ。

一方、安全性に関する懸念も根強い。
特に「利用規約やデータの扱いが不透明」（27.0%）、「情報漏えいのリスク」（22.3%）といった声は無視できず、AI利用に伴うリスクマネジメントの重要性があらためて浮き彫りとなった。

実際には社内ルールの確認や段階的な運用で不安を軽減する工夫がなされており、実務とのすり合わせを通じてリスクと向き合っている現状がある。

AI活用で業務効率が向上、一方で“人の関与”が今後の課題か

今後、製造業におけるAI活用はより広範かつ深層的に展開されていくと見られる。
現時点では「継続的に使いたい」「積極的に活用したい」といった回答が多く、一定の満足感が今後の利用意欲に直結している状況だ。
この傾向が続けば、部分的な導入から全体最適化を見据えた本格運用へと段階的に移行する企業が増加する可能性が高い。

また、セミナーや社内の事例共有が効果的であったことから、今後は社内教育やナレッジベースの整備が導入加速の鍵になると考えられる。さらに、AIに関するリスクマネジメントの強化や、説明可能なAI（Explainable AI）の導入が進めば、安全性への懸念も徐々に解消されていくだろう。

ただし、今後の成否はAIそのものの性能以上に、人とAIがどのように役割分担し、補完関係を築いていくかにかかっている。現場の業務設計そのものを再構築し、「AIと人の協調プロセス」を制度として整えることが、次なる進化の条件に必要になると思われる。

AI導入はゴールではなく、業務変革の起点にすぎないという視点が、今後の発展には不可欠となるだろう。