生成AIの教育活用に高まる期待と現実　関心9割も導入は4割未満、調査で浮かび上がる課題

2025年5月8日、一般社団法人教育AI活用協会は、教育現場における生成AI活用に関する調査結果を発表した。調査によれば、生成AIの教育活用に関心を持つ団体は9割近くに上る一方で、導入に至っているのはわずか4割にとどまっている。

教育現場における生成AI活用の温度差と制度の壁

教育AI活用協会が2025年3月5日から31日に実施した調査結果から、生成AIへの高い期待が見て取れる。
全国288の教育関連団体のうち、実に89.9％が「関心がある」と回答し、AIの持つ教育的可能性に注目が集まっていることが明らかになった。
回答団体は教育委員会、教育センター、小中高校を含み、その関心は地方から都市部まで幅広く浸透していると見られる。

一方で、実際に導入の準備を進めている団体は41.3％、すでに活用を決定しているケースは16.3％にとどまった。
理解度に関しても、生成AIの基本的なガイドラインや活用方法について「理解がある」と答えたのは50.7％にとどまり、導入に向けた認知の深度が十分とは言えない状況である。

特に注目すべきは、補助金の活用意向に大きな開きがある点だ。調査対象のうち、補助金を利用する予定があると回答したのは23.3％に過ぎず、残りの約8割は制度の利用を見送る姿勢を示した。
補助金制度そのものへの理解不足や、手続きの煩雑さが障壁となっている可能性が高い。

代表理事の佐藤雄太氏は、「生成AI活用による教育効果への期待感と、自治体として動き出さなければならないという焦燥感がある」とし、自治体や学校が主体的に取り組む必要性を強調。今後は、導入を検討する団体に対して、研修や情報提供などの支援体制を強化する方針を示した。

教育現場に求められる制度設計と今後の展望

調査から浮かび上がったのは、「興味はあるが一歩が踏み出せない」という多くの教育現場の現状だ。
ChatGPTやBing、GeminiなどのAIサービスは認知されつつあるが、それを実際にカリキュラムや業務に組み込むには、導入フローの明確化とリスク対策の整備が不可欠となる。

導入を阻む最大の要因は制度の複雑さと実務負担である。補助金を活用するにあたっては、申請書類や手続きのハードルが高く、現場の教員や事務職員のリソースでは対応が難しいという声も少なくない。
加えて、AIの活用に対する法的・倫理的なガイドラインが明確でないことも、慎重な姿勢を生んでいる。

とはいえ、教育における生成AIのメリットは明確だ。生徒一人ひとりに最適化された学習指導、教員の業務効率化、教材の自動生成など、従来の教育モデルを刷新する可能性を持っている。
今後、導入の壁をいかに取り除くかが、教育の未来を左右するカギとなるだろう。

教育AI活用協会の調査結果は、今まさに行動と制度設計が求められていることを示している。

総じて、生成AIの教育現場への導入は、制度整備と現場の理解促進が鍵を握る。これらが進展すれば、教育の質の向上や学習の個別最適化が実現し、次世代の教育モデルが構築される可能性が高まるだろう。