衛星通信で山岳遭難の初動を30分以内に KDDI「au Starlink Direct」が実証成功

2025年5月30日、KDDIとヤマレコ、長野県警は、衛星とスマートフォンの直接通信サービス「au Starlink Direct」と登山アプリ「ヤマレコ」と山岳遭難救助隊が一体となって連携した、山間部での救助活動の実証に成功した。遭難者の救助初動を従来の数日から30分以内に短縮可能と証明した。
「au Starlink Direct」が登山中の遭難通報を迅速化
KDDIは、衛星通信サービス「au Starlink Direct(スターリンク・ダイレクト)」を活用し、山岳地帯での遭難時にスマートフォンから直接救助を要請できる体制を構築した。
本実証には、登山アプリ「ヤマレコ」と長野県警察本部が連携し、長野県北沢峠にて現地実験を実施。遭難時に位置情報や負傷状況をヤマレコ経由で送信し、それが即座に遭難者情報照会システム「SAGASU(サガス)」と連携される仕組みが検証された。
山間部では携帯電波の圏外となる場所が多く、遭難者が連絡手段を持てないまま数日以上発見されないケースも少なくない。2023年には全国で3126件の山岳遭難が発生し、過去最多を記録している。
今回の実証では、家族へのメッセージ通知機能も確認された。衛星経由で送信された遭難情報は、SAGASUに登録されると同時に家族に自動通知される。
家族が警察に通報し、登山者の保険加入の有無やルート、装備状況などが即時共有されることで、救助隊の出動準備が迅速に整う。通常は数日かかる初動が30分以内で完了したとしている。
救助スピードの革新に期待 民間×警察の連携が鍵に
今回の連携による最大の成果は、遭難者の状況把握から救助活動開始までのタイムラグを劇的に縮めた点にある。
既存の衛星通信サービスは、特定OS端末でしか利用できず、登山計画や個人情報まで網羅することは困難だった。au Starlink Directは、スマートフォンが衛星と直接通信するという特許技術を活用し、これまでの制限を突破した。
加えて、ヤマレコのような登山アプリと組み合わせることで、あらかじめ登録された登山ルートや保険情報が活用可能となり、救助の優先順位判断にも役立つ。警察側も状況に応じて適切な人員や装備を選定できるため、二次災害のリスク軽減にもつながる。
一方、全ての登山者がこのサービスを利用できるわけではない点や、天候や地形による衛星通信の安定性など、運用上の課題も残されている。
とはいえ、今回の実証実験で得られた成果は目覚ましく、民間と行政の垣根を越えた今回の取り組みは、全国の山岳救助体制に新たなモデルを提示するものとして高く評価されるべきだ。
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