ロシア中央銀行、富裕層向け暗号資産投資の実験的制度を提案 暗号資産取引の合法化に向けた一歩か

2025年3月12日、ロシア中央銀行が、特定の富裕層投資家を対象とした暗号資産投資のための3年間の実験的法的制度(ELR)を提案したと報じられた。ロシア中央銀行の動きは、同国の暗号資産に対する姿勢の変化を示していると考えられる。
ロシア中央銀行の提案内容と背景
ロシア中央銀行は、投資総額が1億ルーブル(約114万ドル)以上、または年収が5000万ルーブル(約57万ドル)を超える「特に資格のある」個人投資家に対し、暗号資産取引を許可する3年間の実験的法的制度(ELR ※)を提案した。適格投資家として認定された機関投資家も暗号資産の取引が許可されるという。
実験的法的制度(ELR)は、暗号資産市場の透明性を高め、富裕層投資家に新たな投資機会を提供することを狙いとしているようだ。
ロシアはこれまで、暗号資産に対して厳格な姿勢を取ってきた。2022年1月には、暗号資産の使用やマイニングを禁止する提案を行っている。
しかし、ウクライナとの紛争に伴う西側諸国からの制裁を回避するため、企業が国際貿易で暗号資産を使用することを認める法律を承認した。
実験的法的制度(ELR)の提案は、暗号資産取引の合法化に向けた一歩と位置づけられると推測される。
※実験的法的制度(ELR):新たな法律や規制を限定的な範囲や期間で試行し、その効果や影響を評価するための制度。
ELRのメリット・デメリットと今後の展望
ロシア中央銀行が提案した富裕層向けの暗号資産投資に関する実験的法的制度(ELR)には、いくつかのメリットとデメリットが存在する。
まず、メリットとしては、特に資格のある投資家に対して新たな投資機会を提供することで、暗号資産市場の流動性が向上する可能性が挙げられる。資金の循環が活発になることで、ロシア国内の投資環境が整い、国際的な投資家にとっても魅力的な市場となることが期待されている。
また、暗号資産取引の合法化が進めば、透明性が高まり、投資家の信頼感を強化する要因となるだろう。
一方で、デメリットとしては、暗号資産の使用が依然として支払い手段として禁止されているため、取引の範囲が限られることが挙げられる。制約が存在することで、富裕層投資家が暗号資産を活用する際の自由度が低くなる可能性も考えられる。
また、市場のボラティリティやリスクについての懸念も根強く、投資家は慎重な姿勢を崩さない可能性が高い。加えて、規制の不透明さが依然として課題となっており、投資家が安心して取引を行うためには、より明確なルール整備が不可欠となるだろう。
今後は、国際的な規制の変化や市場の動向に応じて、ロシアの政策も柔軟に変化する可能性が考えられる。市場の透明性向上や規制の明確化を求める声が強まる中、投資家はロシアの暗号資産市場の発展を慎重に見極める必要があるだろう。
他国の動向と比較しながら、ロシアがどのように暗号資産を取り扱うかに注目していきたい。