パナマシティ、公共料金を暗号資産4種で支払い可能に

2025年4月16日、パナマ共和国の首都パナマシティは、公共料金の支払いにビットコインやイーサリアムなどの暗号資産を使用可能とする新制度の導入を正式発表した。
中南米で初めての取り組みであり、同市の仮想通貨に対する積極姿勢を象徴するものだ。
市議会が可決、4種の暗号資産で税金や罰金が支払い可能に
パナマシティ市は、暗号資産を活用した公共料金支払い制度を導入する条例案を市議会で可決し、4月16日にミズラチ市長がその実施を正式に発表した。
新制度では、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、USDコイン(USDC)、テザー(USDT)の4種が利用対象となる。
支払いの対象は、税金や罰金、各種許可証発行料、行政手数料など幅広く設定されており、市民は従来の法定通貨に加え、これらの仮想通貨で支払う選択肢を得ることになる。
今回の制度導入の背景には、エルサルバドルがビットコインを法定通貨として導入した事例がある。デジタル化と経済の多様化を図るパナマにおいても、仮想通貨の活用はその戦略の一環と位置づけられているようだ。
ミズラチ市長は「(この制度により、)経済全体と政府全体における仮想通貨の自由な流れが可能になる」と語っており、パナマが中南米におけるWeb3先進都市を目指す強い意志が感じられる。
すでにパナマでは仮想通貨を巡る法整備が進められており、民間でもブロックチェーンを活用したプロジェクトが進行中だ。今回の制度は、行政がその流れを後押しする象徴的な政策である。
特にビジネス層やスタートアップにとっては、税務処理や行政手続きの柔軟性が高まることになり、今後の企業誘致にも影響を及ぼすと考えられる。
中南米全体の仮想通貨受容に波及 今後は他通貨対応や市民の声が鍵に
パナマの新制度は、地域全体に大きな影響を及ぼす可能性がある。
中南米ではすでにエルサルバドルが2021年にビットコインを法定通貨化して以降、仮想通貨の公的利用が注目されてきた。パナマはそれに次ぐ動きとして、公的機関による仮想通貨受け入れを開始した点で、他国に対して明確なメッセージを発信しているともとれる。
ラテンアメリカでは、インフレや銀行システムへの不信感といった背景から、個人レベルでの暗号資産の利用が拡大している。
今回のパナマの決断は、行政のデジタルシフトが市民のニーズに合致していることを示しており、今後は他の中南米諸国が追随する動きも出てくる可能性があるだろう。
一方で、市民の理解促進と制度設計の柔軟性が今後の課題となるだろう。
仮想通貨の価格変動リスクや手数料体系など、実運用上の課題についても丁寧な対応が求められる。また、将来的にはソラナ(SOL)やアバランチ(AVAX)といった他のアルトコイン(※)の支払い対応が検討される可能性もあり、今後の制度拡張にも注目が集まる。
制度の正式運用開始日や技術的なインフラ整備については、今後市から詳細が発表される見通しである。仮想通貨と行政サービスの融合がどこまで機能するか、パナマシティはその先行指標のような存在となるだろう。
※アルトコイン:ビットコイン以外の暗号資産の総称。独自の技術や目的を持つものが多く、DeFi(分散型金融)やNFT(非代替性トークン)との連携が進むケースも多い。