エヌビディアのAIサーバー米国生産、ウィストロンが来年対応可能と発表

2025年5月16日、台湾の電子機器メーカーであるウィストロンは、顧客である米半導体大手エヌビディアのための新しい在米製造施設が2026年にも準備が整う見通しを明らかにした。ほかの顧客候補とも交渉を進めているという。
エヌビディアの製造計画に歩調、ウィストロンが米国施設で来年稼働へ
今回の発表は、エヌビディアが進める米国内でのAI関連ハードウェア製造強化の一環として位置づけられる。
同社は新たな製造施設を設け、その一部はエヌビディアがAIサーバーを生産する計画をサポートするために活用される。
エヌビディアは2024年、スーパーコンピューター製造を担う大規模な工場群をテキサス州に展開すると発表しており、ヒューストンでは鴻海精密工業(Foxconn)と、ダラスではウィストロンとの提携が進んでいる。ウィストロンの新工場も、この枠組みに組み込まれる形となる。
生産体制の本格稼働は12〜15カ月以内と見られており、エヌビディアの現地供給網が拡充される見込みだ。
ウィストロンの林建勲CEOは、「顧客の発表通りだと思う。我々の進展具合は顧客次第となる」と述べ、エヌビディアとの連携について言及した。
なお、他の顧客企業名についてはコメントを避けた。
米中対立下の製造移転、半導体供給網の再構築が加速
今回の動きは、米中間の技術覇権争いを背景に、米国内製造回帰の流れが加速している文脈とも連動する。エヌビディアにとっては、中国依存を減らし、サプライチェーンの安定性を確保する手段でもある。ウィストロンとの提携は、こうした戦略の一環と見てよいだろう。
また、米国政府が推進するCHIPS法(半導体支援法 ※)の影響も無視できない。国内製造拠点を拡充する企業には補助金や税制優遇が適用されることから、エヌビディアやそのパートナー企業にとっては事業展開上の追い風となっている。
ただし、製造拠点の立ち上げには人材確保やインフラ整備といったハードルが存在し、予定通りの稼働が実現するかどうかは不透明な側面もある。
今後は、ほかの製造パートナーや競合企業の動きも注視する必要がある。例えば、インテルやAMDなどの大手半導体企業が米国内での製造を強化しており、同様の構造変化が業界全体に波及する可能性がある。
※CHIPS法:米国で2022年に制定された半導体支援法。国内半導体製造の促進と技術覇権の確保を目的としており、巨額の補助金が投入されている。