NTTドコモ、1年間で5G基地局を20%増設 山手線で前田社長自ら通信品質をチェック

2025年5月9日に開かれたNTTドコモの決算会見において、同社は国内の5G通信品質向上に向け、1年間で基地局数を約20%増加させたと明らかにした。
通信速度の改善やイベント時の臨時対応強化など、具体的な成果も報告されている。
5G品質向上のための具体策とその効果
NTTドコモは、国内における5Gサービスの品質改善に「最重要課題」として取り組んでおり、前田義晃社長は「(通信サービスの品質が)着実に向上している」と手応えを示した。
2024年度に入ってから、同社は5G基地局を前年度比で約20%増設したという。
この動きは都市部だけでなく、交通インフラ沿線にも波及しており、鉄道沿線の通信速度は前年比30%の向上を記録している。特に山手線周辺では約80%と大幅な改善が見られた。
通信品質の改善は、単なる設備増設にとどまらない。前田社長は「自ら定期的に山手線に乗って、通信品質の測定を行っている」と語り、現場レベルでの確認作業を重視する姿勢を示した。
これはトップダウンだけでなく、実地でのフィードバックを取り入れるという同社の運用方針を象徴していると言える。
また、イベント時など混雑が予想される状況下でも安定した通信環境を提供するため、臨時の対応体制を強化。2023年度の実施件数は前年比で約2倍となる232件に達した。
SNS上で確認される通信への不満の投稿も、社内モニタリングによると約4割減少しており、利用者の体感としても改善が進んでいるとみられる。
通信基盤の再構築と今後の展望
NTTドコモは通信品質の向上を一過性の施策ではなく、今後の成長戦略の中核と位置づけている。
2025年度以降もSub6帯や4Gの周波数帯を活用した5Gエリアのさらなる拡充を予定しており、これにより都市部と地方の通信格差を是正する狙いがあると考えられる。
さらに、最新型の基地局装置の導入や、HPUE(※)に対応した端末の普及促進も見込まれている。これにより、建物の奥まった場所や地下など従来通信が不安定だったエリアでも、安定した接続環境が期待される。
一方で、同社は通信インフラ構築のコスト効率化にも本格的に着手している。組織や調達プロセスを再設計することで、2026年度には基地局1局あたりの投資単価を20%削減、2027年度には全体のネットワーク投資を300億円規模で圧縮する計画だ。
この動きは通信料金の安定やサービス品質の継続的な改善にも寄与すると見られる。
ビジネスパーソンにとって、リモート会議、クラウドサービスの活用、生成AIとの連携など、通信に依存するシーンは増加の一途をたどっている。
時間や場所に左右されずに高品質な通信環境が保証されることは、日常業務の効率化だけでなく、新たな価値創造のインフラとしても重要な意味を持つだろう。
※HPUE(High Power User Equipment):5G端末の送信出力を従来より高めることで、電波の届きにくい場所でも通信性能を向上させる技術規格。特に都市部の高層ビルや地下鉄などでの効果が期待されている。