日本触媒、生成AIを業務で活用へ ストックマーク技術で社内外情報活用を効率化

ストックマークと日本触媒は2025年3月27日、生成AI技術を活用した新規研究テーマと事業創出の効率化を目指す実証実験を終了したと発表した。
日本触媒は国内化学メーカーとして、AI企業ストックマークの技術を活用したナレッジグラフ構築と独自LLMの開発により、新規用途探索と市場リサーチの高度化に成功している。
技術情報を基にした新規用途探索と業務効率化を実現
日本触媒の取り組みは、2030年に向けた長期ビジョンの一環として、事業ポートフォリオの変革と収益性の高いソリューション事業の拡大を目指すものだ。
実証実験では、社内の研究資料や技術報告書をベースに、ストックマークの生成AI技術を組み合わせることで、具体的な成果を上げた。
特に大きな成果は、日本触媒が保有する技術を深く理解した独自生成AIの開発に成功したことであろう。
長い歴史を持つ日本触媒の膨大なデータを活用することにより、業界固有の専門知識や過去の成功・失敗事例を踏まえた精度の高い分析が実現している点が大きな利点だ。
技術的なアプローチとしては、膨大な情報を効率的に整理するためのナレッジグラフ(※)構築技術が活用された。
ストックマークのドキュメント解析技術を用いて、言葉の意味や関係性をAIが理解できるようにしたのである。
※ナレッジグラフ:情報やデータの関係性を視覚的に表現したもので、概念同士のつながりを「ノード」と「エッジ」で構成されるグラフ構造で表現する技術。情報検索や推論の効率化に役立つ。
社内情報活用の課題を解決し、今後の精度向上を目指す
日本触媒が直面していた課題は、社内情報が整理されておらず検索に時間がかかることや、属人性が高くなりがちな点にあった。
また社外情報においても、必要な情報を取得することの困難さや、膨大な情報量の分析に多くの時間を要するという問題が存在していた。
これらの課題に対して、生成AI技術と豊富なビジネスデータを組み合わせた解決策が、今回提示されたことになる。
今後の展開としては、書式が統一されていない複雑な社内文書への生成AI活用の検証が進められる見通しだ。
特に精度向上に焦点を当てた取り組みが計画されており、実用性の高いシステムの構築が目指されている。
加えて、ストックマークが提供するナレッジマネジメントサービス「Anews」の業務適用も予定されているため、情報活用のさらなる高度化が期待できるだろう。
今回の取り組みは、単に日本触媒一社の業務効率化にとどまらず、化学業界全体の研究開発プロセスの革新につながる可能性を秘めている。
現在はまだ実験段階で、実務上どれほどのメリットを生むかは不透明だが、長い歴史を持つ日本触媒がAIを導入した意義は大きく、他の化学メーカーもこの動きに追随する可能性があるだろう。