NEC、新サイバー監視施設を公開 国産生成AIによる自動サイバーディフェンスを実現

NECは2025年5月8日、国産生成AIを中核とした新たなサイバー攻撃監視施設「Cyber Intelligence & Operation Center」を新設し、10月からサービス提供を開始することを発表した。この施設は、企業や政府機関などに対するサイバー攻撃にリアルタイムで対応する次世代のセキュリティ拠点として設計されている。
24時間体制で脅威に対応
NECが発表した新施設では、サイバー攻撃の兆候を24時間体制で監視し、攻撃パターンの解析から対処法の提示までを自動で行うシステムが稼働している。
最大の特徴は、NEC開発の国産生成AI「cotomi」を活用し、施設内の業務の9割を自動化している点にある。
膨大な通信データをリアルタイムで処理し、攻撃の兆候を即座に検出・分析する仕組みになっており、従来のセキュリティオペレーションセンターとは一線を画すものだ。
また、AIは過去の攻撃事例との類似性を判断し、瞬時に最適な初動対応を提示することで、人的リソースの負荷軽減にも貢献している。
AIを活用したこの新たな運用形態は、サイバーセキュリティの現場において「反応」から「予測」へと重心を移す。
NEC森田隆之社長も「サイバーセキュリティの約95%はAIが関与している。今後さらにAIの関与は高まる」との認識を示した。
サービスは2025年10月の稼働を予定しており、その本格的な運用開始がもたらす効果には注目が集まる。
高まる脅威と社会的要請
近年、日本国内でもサイバー攻撃の深刻化が目立っている。
2024年末には日本航空(JAL)が不正アクセスを受け、予約システムに障害が発生。また、4月には仙台市の印刷会社が被害を受け、17万件超の個人情報流出の可能性が報じられた。
サイバー攻撃の通信数は直近10年で10倍以上に増加しているという。
この監視施設の新設は、こうした課題に応えるものだ。
NEC中谷昇チーフセキュリティーオフィサーは、「これは政府や企業の安全保障だけでなく、日本のネットユーザー全体の安心に直結する施策である」と述べる。
ネットワーク経由の脅威が国家安全保障と個人の暮らしの両方に影響を及ぼす以上、対策は一企業の枠を超えた社会的責任と言える。
また、NECはKDDIとサイバーセキュリティ分野での協業に向けた基本合意を結んだ。
両社は日本国内における最大規模の体制構築を目指し、AIによる脅威分析やグローバルな監視体制の強化に取り組む方針を示している。大規模な協力体制に期待が集まっている。
国産のAIによるサイバーディフェンスには即応性と予測力において期待がかかるが、AIの進化とともにサイバー攻撃手法も巧妙化するため、競争は終わりのないものになる。
施設の運用が軌道に乗った後も、継続的なアルゴリズムの更新と、実戦での検証・改善が不可欠であろう。